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完全封印された少女漫画「キャンディ・キャンディ」に起こった著作権裁判とは

漫画やアニメ、ドラマなどにおいて封印された回というのは、これまで多く存在している。

作品内の不適切な表現に起因するものや時には作者自身の評価による意向など、理由はさまざまだ。こうした例は、多くの場合その対象となった回のみがコミック収録や再放送がなされないという形になることが多いが、作品そのものが封印されて絶版となり、アニメの再放送すら叶わなくなったという例が存在する。

少女漫画雑誌『なかよし』にて1974年から79年まで連載されていた「キャンディ・キャンディ」は、原作を児童文学作家・水木京子、漫画家・いがらしゆみこが作画した当時の人気漫画作品だ。

その人気ぶりは凄まじいものであり、初版発行部数が100万部を記録した日本最古(日本初)のコミック作品となっている。

連載当時は、少女なら知らない者はいないとも言われていたほどの知名度を獲得していた本作であるが、現在コミックは絶版状態で、アニメの再放送もままならない状態となっている。

その理由は、原作水木と作画いがらしの間で起こった著作権にまつわる一大騒動にある。

連載当初、本作は講談社の管理のもと、水木といがらしの両名著作権者となっており、契約終了後は著作権管理を両者が行なうこととなっていた。

この時、「キャンディ・キャンディを使用する際には両者の同意が必要」という契約がされたが、キャンディ・キャンディのプリクラフレームや香港版キャンディ・キャンディの製作など水木が一切関知していない事態が発覚し、後にいがらしによって勝手に行なわれていた事実が判明。




1995年、キャンディ・キャンディの再ブームを仕掛ける動きが高まっていた中で、いがらしが強く賛成する一方、完結した作品と見なした水木は再ブームビジネスにことごとく反対の意思を示していたという。このことに業を煮やしたいがらしが、水木の同意を得ずしてキャンディ・キャンディの再ブームビジネスを推し進めていったというのが騒動の発端となった。

いがらしは水木に各種ビジネスの無条件追認を迫るが、状況が把握しきれていない水木は「状況をクリアにして欲しい」といがらしに説明を求めた。すると、いがらしは先の作品利用契約を破棄するという一報的な通告をし、事態は訴訟にまで発展していった。

97年、水木からグッズ販売停止訴訟がされたが、この時、いがらしは「絵自体の著作権は作画者にある」すなわち「水木に著作権は無い」という主張をしたため、当初は契約違反に対する裁判であったはずが著作権をめぐる裁判へと変容していった。

結果として、2001年の最高裁で水木の勝訴となり、「水木のみが著作権を持ち、漫画は原作の二次的著作物である」ことが判決で再確認されることとなった。そして、この影響によって、コミック、文庫版が絶版となり、アニメは再放送禁止、さらにビデオやDVDなど映像物の販売も不可となり、作品そのものが封印されてしまうという前代未聞の事態となった。

だが、いがらしによる本作のネームバリューを利用したビジネスはその後もやむことはなく、あげくには本作のキャラに酷似した登場人物を使った新作漫画を台湾で発表するなど、両者の溝は深まる一方となる。

その後も訴訟のたびに負け続けたいがらしであるが、結局一度も謝罪の言葉が聞かれることは無かった。

両者の和解がほぼ不可能であるため、少なくとも両者の死後も数十年は復活の見込みは無いと考えられている。この騒動は、大ヒット作品が抱えたあまりにもつらい悲劇として歴史に刻まれる結果となった。

【参考記事・文献】
キャンディ・キャンディ
https://x.gd/hqEso
「キャンディ・キャンディ事件」延々と繰り広げられる著作権争いとは?!
https://wow-media.jp/w00247/
キャンディキャンディ事件で放送禁止・絶版状態!漫画を読む方法は?
https://anabre.net/archives/kk-p109495.html

【文 ZENMAI】

画像『キャンディ・キャンディ (8) 講談社コミックス