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名作テレビドラマ「おしん」は海外人気も凄まじかった!

NHK連続テレビ小説の第31作となり橋田壽賀子が原作・脚本を手掛けた『おしん』は、明治期の貧しい村に生まれ、幼くして奉公人として生家を出た少女おしんが、時代に翻弄され様々に苦労を重ねつつも懸命に生きていく姿を描いた作品だ。

本作は、平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%という、日本のテレビドラマの歴代最高視聴率を記録し、現在もなお朝ドラの最高傑作と呼ばれている伝説の作品となっている。

「おしん」は、これまで日本国外の68の国や地域で放送されたが、その人気は海外でも留まることを知らなかった。海外で初めて放送されたシンガポールでは視聴率80%を記録し、エジプトでも同様に80%、中国では76%、イランでは90%の視聴率を記録したと言われている。

驚くべきはその視聴率だけではない。

逸話では、ドラマが始まると皆帰宅してしまい放送時間は町を出歩く人が誰もいない、放送中に停電が発生してしまい中断した上ドラマが見られないと起こった人々が放送局に押し寄せ暴動が起こったこともあったという。中には、おしんが可哀想なので食べさせて欲しいと放送局宛てに大量の食物が送られてきたこともあったそうだ。

90%の視聴率を記録したイランにおいては、「理想の女性は誰か」とのラジオ放送での質問で、最高指導者のホメイニの娘を差し置いておしんが選ばれ、ラジオ局の責任者4名が解雇されるという事件まで発生しており、この他、次の国のリーダーは誰が理想かという質問に対しても第4位におしんがランクインしてしまったほどであるという。

当然ながら、おしんはムスリムですらないので、異常な事態であったことは間違いない。




世界中で社会現象と化した「おしん」の影響力はすさまじく、タイでは「おしん」の放送時間にかぶらないよう閣議の時間が変更されたという逸話も残っており、最新話のあらすじを掲載したバンコクの新聞は発行部数も増加したそうだ。また、ベトナムやペルーにおいては、「おしん」のあまりの熱狂ぶりに「おしんシンドローム」(Oshindorome)なる言葉まで誕生してしまったという。

ついには、おしんが作中で結婚後に名乗った苗字である「田倉」(たのくら)が新たなペルシャ語として普及している(意味は「古着屋」)。

有名人やブームとなった人物にあやかった命名が子どもにされるケースはよくあるが、「おしん」についてもそれは例外ではなかった。欧米風の名前が日本で言うところのキラキラネーム扱いされるエジプトなどのイスラム教圏でさえ、「おしん」という名付けが流行したと言われている。

このような空前の世界的ヒットは、「おしん」の舞台となる時代の環境が、放送された国や地域において重なる部分が多く共感が得られたことに起因しているのではないかとも言われている。しかしそれ以上に、苦難の中でも前向きに生きていくおしんの姿が、日本を超えて世界中の人々の心を掴んだのも確かだろう。

中国においては、日本人に対して残虐なイメージを抱いていた人々が、「おしん」を観てその価値観を大きく変えたという例もあったほどであり、エジプトでは日本があまりにも貧しい国なのだと勘違いして憐れんだ人々も多く見られたという。

しかしその一方で、フィリピンでは放送が打ち切りになるほどに人気になることはなく、また韓国では「おしん」番組自体が放送されていない。

【参考記事・文献】
「おしん」の海外人気が凄すぎる
https://x.gd/YUxUr
「おしん」に感動したエジプト人が感じた日本の不思議
https://yukashikisekai.com/?p=80042#google_vignette
伝説のドラマ「おしん」は海外でも大人気。68の国や地域で放送 – エジプト視聴率80%、イランでは90%
https://blog.sky-spider.com/?num=37
新しいペルシャ語単語を作ったおしんの功績
https://ameblo.jp/2030ichigo/entry-12502751872.html
ドラマ「おしん」が世界を魅了、そのわけは 文化や言葉にも影響
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-57353797
フィリピンで『おしん』がウケなかった理由
https://ryugaku-philippines.com/2019/08/20/drama-oshin-and-philippines/

【文 ナオキ・コムロ】

画像『連続テレビ小説 おしん 完全版 1 少女編 ブルーレイ