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死亡説に怒り それでも俳優のプライドを貫いた「高倉健」伝説

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戦後を代表するスター俳優、高倉健。『日本侠客伝』の主演によって一躍任侠映画の看板スターとなり、以後『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』『鉄道員(ぽっぽや)』『八甲田山』などといった作品に出演、不器用で寡黙な人物を演じることが多かったが、その仕草や間の取り方、空気の作り方など、その存在感から彼に惹かれる人々も多い。

上下関係に固執しないことでも知られており、相手が若手やスタッフであろうとも共演者に対しては挨拶を忘れず、必ず立ち上がってお辞儀をして敬意を払うほどに礼儀正しい人物であった。このような姿勢に惚れ込む人々は多く、石倉三郎も彼の名にあやかり「倉」の字を芸名に使用するほどであった。

ある極寒の冬の日、オフで休みであった高倉がロケ現場へ激励に訪れた時のこと、出演者やスタッフがあたる焚火に高倉も勧められたが、「勝手に来た身なので、皆さんに迷惑がかかる」と断っていたのだが、その影響で誰も焚火にあたろうとしなかったために、スタッフから「健さんがあたらないとみんなあたれないんです」と泣きつかれ、やっとみんなが焚火にあたることができたというエピソードまである。

真面目を貫く態度は映画にも表れている。

『幸福の黄色いハンカチ』にて、刑期を終え出所した直後の食堂で美味しそうに飲食するという演技が1テイクでOKとなったが、あまりにも見事だったことを監督の山田洋次が尋ねると、高倉はこのシーンの撮影のために2日間何も食べなかったということを明かしたという。

『八甲田山』では、3年がかりの長期ロケになるということから、1日80本もタバコを喫むヘビースモーカーでありながらも禁煙し、それ以来30年以上タバコを絶った。さらに、撮影に集中するためということから、マンションと所有するメルセデスベンツを売却するに至ったという。




また、演技以外の部分でもその人柄はにじみ出ている。

『夜叉』の撮影初日が終わり、役者やスタッフの泊まる旅館の食堂へ向かうと、監督と高倉だけみんなとは違う豪華な料理が並んでいたのだが、それに彼は「みんなと同じ料理にして下さい」と遠慮していた。また、志村けんが映画撮影で北海道に向かう前日、高倉は関係者から志村の携帯電話の番号を聞き、「明日はよろしくおねがいします。寒いので気を付けてください」という旨のメッセージを入れ、志村は大いに感激したという。

高倉のそうした撮影への真摯な態度や他者への気遣いは、見る者そして出会った者の誰もが魅了されるものであったことは間違いない。そして、それは日本のみならず海外でも同様であり、彼がフリー転向後に初主演となった『君よ憤怒の河を渉れ』は、文化大革命後の中国で初めて公開された海外映画となったが、これによって高倉は中国における代表的な日本人として人気となった。

因みに、映画での役柄を守るために私生活を明かさなかった彼は、それが災いしてか生前に死亡説が流れたこともあった。

1987年4月ごろ、「高倉健エイズ死亡説」なる怪情報が流れ、雑誌やテレビ番組などを巻き込む大騒動へと発展したのである。一説には多くの昭和スターが集ったという六本木のゲイバーに高倉も通っており、そのゲイバーのママと高倉ができていると言い出した人物がいたのではないかとも考えられているが、真相は今となっては藪の中となっている。

この同年5月に行なわれた主演映画の制作発表会見において、高倉はこのことに、「心底から怒りを感じています」と答えたほど怒り心頭であったという。しかし同時に、「俳優は映画でモノを言うしかありません」「一度殺されたんだから、限りある命を大切に一生懸命やらなくては」という映画の意気込みと共に語った。

「いずれ正しいことが分かってもらえると思いますので」という言葉で締めくくった彼のその姿は、まさしく俳優として生きる彼の矜持そのものであったといえるだろう。

【参考記事・文献】
【伝説】高倉健のヤバい感動エピソードまとめ!
https://renote.net/articles/68923
高倉健
https://dic.nicovideo.jp/a/%E9%AB%98%E5%80%89%E5%81%A5
「心底、怒りを感じています」高倉健が切り出した「エイズ死説」への猛抗議/壮絶「芸能スキャンダル会見」秘史
https://www.asagei.com/excerpt/215217
高倉健さん激怒のエイズ死亡説 ゲイバーママが「私のせい」
https://www.news-postseven.com/archives/20191113_1484925.html?DETAIL
東映との決裂、前妻の死――謎多き「高倉健」のエイズ死亡説
https://www.premiumcyzo.com/modules/member/2013/11/post_4626/
健さんが男気見せた2大騒動
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/98554#goog_rewarded

(ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)