アニメ『ちびまる子ちゃん』の主人公まる子役で知られる声優TARAKOが逝去した。63歳という若さでの突然の死去、そして漫画家鳥山明が死去したことの公式発表がなされてまだ間もなかったタイミングということもあり、多くの人々に強い衝撃を与えた。
彼女がアニメ声優を目指すようになったのは、高校時代に『ルパン三世』に憧れてアニメ同好会を結成してからであり、演技力をつけようと高校卒業後に演技の専門学校へ入学。彼女の声優デビューはアニメ『うる星やつら』の幼稚園児役であり、その後も声色から幼い子どもやギャグキャラ、動物キャラなどを担当することが非常に多かった。
特徴的な声もさることながらその芸名も個性的であった彼女であるが、その由来は学生時代、『サザエさん』の登場キャラクターであるタラちゃんの声真似が上手かったということで、同級生から「タラちゃんの女の子」略して「タラコ」と呼ばれていたことに起因しているという。
彼女の名前にまつわる有名なエピソードでは、「ファンの差し入れてもらった”生の”タラコの入ったおにぎりを食べてお腹を壊した」という冗談のようなものがある。この話は、2000年代に人気を博したテレビ番組『トリビアの泉』の中でも紹介され、『ちびまる子ちゃん』内のナレーションでも知られるキートン山田を起用した上、同作品のアニメ風再現映像が用意されたことでも話題となった。
このことからも充分におわかりであろうが、彼女と『ちびまる子ちゃん』は非常に強い縁を持っており、同作品に絡んだエピソードも非常に多い。実は元々、主人公まる子役の声優は別人に決定していたと言われているのだが、作者であるさくらももこが納得いかずに再度オーディションが行なわれ、その際にさくらももこ自身と非常に声がそっくりであったということからTARAKOに決定したという逸話が残っている。
1990年に『ちびまる子ちゃん』がアニメとしてスタートしてから、実に35年にも渡って出演し続けており、同時に本作は彼女の代表的出演作ともなった。彼女自身、何度か本作で脚本を勤めたことがあり、また2018年に亡くなった作者さくらももこの「ありがとうの会」では、まる子の演技で弔辞を読み上げた。
ところで、彼女には声の出演についてはある都市伝説が囁かれたことがある。それは、「『となりのトトロ』でメイの声をあてた場面がある」というものである。それによると、本来メイ役を務めていたのは坂本千夏であったのだが、その場面の収録が間に合わなかったためにTARAKOが代役として声をあてたというのである。その場面とは、母親の退院が延びたことでサツキとメイがケンカをした際にメイが泣きながら放った「お姉ちゃんのバカ!」というセリフであるという。
とはいえ、この代役説については坂本千夏本人が完全に否定している。なぜ、このような都市伝説が広まってしまったかは定かではないが、実は『となりのトトロ』で実際にTARAKOが声で出演している場面があり、そのことが代役説を生み出したのではないかと考えられている。
因みに、彼女が声で出演した部分は、学校に来たメイとサツキが授業を終えて帰る際に声をかけた女の子の「またね」の一言だけだったそうだ。余談だが、ジブリ作品においてこの声優代役説は『天空の城ラピュタ』でも起こっており、モブで出演していた林原めぐみが、田中真弓の代役としてパズーの声をあてたという都市伝説も出回ったことがあるという。
このように、まさに声優人生ならではと言えるような逸話であるが、彼女は一方でシンガーソングライターとしても活躍していた。まる子役で人気が出始めた頃は、本業がシンガーソングライターであると念を押して主張していた時期もあったという。声優で有名になっていたためにそのことを知る人も少ないと言われているが、声優とは違った彼女のハスキーで透き通った歌声を聴いてみるのも良いかもしれない。
※テキスト内敬称略
(Migawari 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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