画像『Tom Felton: A Complete Biography』
イギリスの作家J・K・ローリングによるファンタジー小説『ハリー・ポッター』シリーズといえば、1997年に刊行されて以降、児童文学の枠を超えて大人にも愛読される世界的ベストセラー作品である。魔法世界をベースとしながらも、ファンタジーらしからぬ生々しい人間模様が描かれていることでも評価が高く、2001年から映画版も公開されたことで社会現象にまでなった。
本作に登場するドラコ・マルフォイは、ホグワーツ魔法魔術学校で主人公のハリー、そしてロンやハーマイオニーの同期生であり、ハリーとはライバル関係にあたる登場人物となっている。
純血至上主義の両親のもと裕福な家庭に生まれ育った彼は、ハリーと友好関係を拒否されて以降彼に執着するようになり、度重なる嫌がらせを行なうようになる。逆らうものには容赦しないエゴイストでもあり、卑怯な手段を使ったり、狡猾に目上へ媚びを売ったりという性格で描かれている。
だが、典型的な”悪役”として描かれたマルフォイであるが、これに伴い厄介な問題が現実に生じてしまっていた。彼を演じたトム・フェルトンは、「ハリー・ポッター」シリーズが元で一躍ブレイクし、他の映像作品でも悪役を演じることが多かった。
しかし、子役で出演したマルフォイがあまりにもはまり役であったせいか、シリーズが完結した後になっても子供を中心とするファンから「ハリーをいじめるな」といったクレームや罵声が後を絶たなかったという。
そもそも非常に穏やかな人柄であったフェルトンは、そうした声にも「子供の夢を壊してはいけない」「どんなに憎まれても構わない」と寛大に受け入れていた。子役という立場でありながら、悪役としてきわめて優良な演技ができたという証明でもあるだろうが、SNSで殺害予告までされるまでの扱いを幼少期から受けてきたことは流石に応えていたようだ。
そのような事情から彼は、2001年の初公開から行なわれていた「ハリー・ポッター」のプロモーションには一切参加しなかったという。
そんなフェルトンが、衝撃を受けた出来事があった。映画でのシリーズが回を重ねるごとにメインの登場人物たち三人だけではプロモーションが回り切れなくなっていったのだ。
そこで、日本へのプロモーションに彼が抜擢されることとなった。
2009年7月、シリーズ第6作目『ハリー・ポッターと謎のプリンス』のプロモーションで彼は来日をしたのである。どこへ行こうと歓迎されないだろうと考えていたフェルトンであったが、いざ空港へ降り立つと熱狂的な日本人ファンの歓迎を受け、思わず「冗談だろ？！」と驚いたという。
これ以後、彼はプライベートを含め6度もの来日を果たし、また日本における震災などではチャリティーなどの支援も行なった。
これほどまでに、マルフォイが日本で高い人気を獲得したのはなぜだろうか。
実際に作中のマルフォイは、ハリーのライバル、悪役というポジションではあるものの、根っからの悪ということでもなく、時としてはハリーを的から庇ったり、自分の子分たちを大切にするなど情に篤い一面もある。だが、日本で異様なほどに受け入れられたのは、やはり日本特有のキャラクター文化にあるとも言えるだろう。
何らかの悪に手を染めようとも最後にはしっぺ返しを食らってしまうという彼は、その意味では、嫌みであるが悪になり切れない”憎めないやつ”ポジションとなっているのは確かだろう。そういった部分に愛嬌を覚えるのが一つの要因であるとも考えられる。
そもそも、悪役ファンという嗜好も海外ではまず見られない傾向であると言われている。普段は嫌なヤツでありながら、いざというときは協力的になってくれるというようなキャラクター観が、「ドラえもん」のジャイアンやスネ夫をはじめとした多くの作品で反映されていることも影響してのことかもしれない。
さらに、「マルフォイ」という名前の語感も一躍買っている。マルフォイのネーミングは、いっときブームをも巻き起こしており、「マルかいてフォイ」というネットミームをはじめとして、公式のLINEスタンプですら「君の瞳にフォイしてる」「テンション高マルフォイ」というネタのノリを展開している。
悪役というポジションでありながら、そんな彼を余すところなく好意的に受け止めらる土壌が、日本には備わっていたと言えるだろう。
【参考記事・文献】
ドラコ・マルフォイ
https://dic.pixiv.net/a/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A9%E3%82%A4#h3_12
トムフェルトンはハリーポッターのマルフォイ役で親日家！身長や日本を好きになった理由まとめ
https://celeby-media.net/I0002178
トムフェルトン親日なのはなぜ？結婚して妻にしたい女達！
https://actors-fun.com/tomfelton-3020#toc3
「冗談だろ⁉︎」初来日を振り返る！『ハリー・ポッター』ドラコ役のトム・フェルトンが同窓会番組に向けコメント発表
https://www.banger.jp/news/69603/
【ハリー・ポッター】日本でのマルフォイの謎の人気理由は？
https://animanch.com/archives/20848067.html
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（ZENMAI 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部）
