幽霊やUFO、UMAの分類や定義付けは基本的なね洋の東西を問わない。幽霊は死者の霊魂が様々な要因で現世に迷い出てきたものだし、UFOは別世界ーーー主に異星人の手による人工物だ。
UMAはネッシーやビッグフットのように、まだ実在が立証されていない野生動物のことである。
しかし、イスラム世界やその文化の影響を受けた場所では、こうしたさまざまな遭遇について、ジンという単一の存在に起因しているものと考える傾向が見られるようだ。
オルガ・ホイト氏は、このテーマに関する論考『悪魔、悪魔、そしてジン』の中で、ジンという名前そのものが「”隠密 “や “闇 “を意味する」と述べている。 ジン(いわゆる魔法のランプの精霊を意味するdjinneeの複数形)は天使でも悪魔でもない。 さまざまな資料によれば、彼らは神によって“煙のない火”から作られた存在だという。 通常は人間の目には見えないが、ジンはどんな姿にもなれる。
ホイト氏や他の作家はジンをいたずら好きでトリックスター的な、妖精や精霊の一種とみなす事が多いが、イスラム世界でのジンはそれ以上の存在だ。 イスラムの伝承によれば、ジンは強力で長命だが、天使や悪魔とは異なって人間と同じ自由意志を持っている。 彼らはアッラーに従うこともあれば、モハメッドの教えを拒絶したり無視したりすることもできる。
しかし、それ故にジンと交渉や取引をしようとする者は注意しなければならない。 ジンは妖精や悪魔同様に人間に騙されて捕らえられたりすると願いを叶えてくれるかもしれないが、その裏には悪意が潜んでいることが多い。
願い事をするときは裏目に出ないよう、具体的に、ジンの発言の真意を探ることが重要だという。時にはジンは人間の伴侶となることもあるが、妖精や妖怪を伴侶にした伝承と同様に両者の関係には規定があり、正確に従わなければ、伴侶となったジンは子供を連れて姿を消してしまう事もあるという。
妖精や妖怪と同様、ジンの本来の住み処は人里離れた自然の中であり、洞窟や特定の森に潜んでいるとされる。 これは単に文明社会から隔絶された人間の不安の現れかもしれないが、同様の伝承は他国にも存在するため、そう珍しいことではないと言える。
ジンは古典的なポルターガイスト(ノック音、引っ掻き傷の出現、物が動き回る等)と共に姿を現すが、やがてその行動はエスカレートし、実体のない声が家族を追い出すために様々な方法で追い詰めてくるという。そうした現象の中には、喋る動物が出てくることもあり、神出鬼没の謎の生物はUMAに類似していると言えるかもしれない。
心霊現象やUMAとの類似はさておき、UFOについてはどうだろうか?。先に述べたように、ジンは“煙のない炎”からできているとイスラムの宗教学者たちは信じている。 『The Vengeful Djinn(復讐に燃えるジン:精霊の隠された意図を解き明かす)』の著者フィリップ・インブローグノ喋るとローズマリー・エレン・ガイリー氏は「イスラムの学者たちは、ジンについて時には肉体を持つこともある、光り輝く物体として描写している」と述べている。
さらに彼らは、ジンは会話をしたい相手の頭の中に直接テレパシーで話しかけることで、声を使わずにコミュニケーションをとることができると述べている。 この現象は宗教的な幻視に限らず、現代でも宇宙人コンタクティにもよく見られる現象だ。発光体としての姿をUFO、人型でテレパシーで語りかけてくる様子を宇宙人だと解釈すれば確かに全てがジンの仕業で説明がついてしまうかもしれない。
ところが逆もまた然りで、超常現象の全てがジンと結びつけられるからといって、全てがジンの仕業と解釈するのも問題があるという。ジンの存在は現在説明のつかない多くのことを説明するのに役立つかもしれないが、他に原因がある可能性も十分に存在すること。
また「ジンのことを考えすぎると、ジンを引き寄せてしまう」と言い伝えられているので、いずれにせよ可能性の一つに留めておく程度にした方がよさそうだ。
(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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