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復活が期待される「ミゼット(小人)プロレス」が衰退していった経緯

ミゼットプロレス、通称「小人プロレス」とは、小人症のレスラー(ミゼットレスラー)によって行なわれるプロレスのことである。日本においては、1960年代前半に、アメリカからミセットレスラーを招いての試合が行なわれていたという記録が残っており、1980年代までは主に全日本女子プロレスの前座として興行が行なわれていた。

一時は非常に高い人気を誇ったミゼットプロレスであるが、時代と共に衰退していき規模は大幅に縮小され、現在はミスター・ブッタマンとプリティ太田の2人のみが現役となっているに留まっている。

ミゼットプロレスが衰退した原因は諸説ある。

第一に言われるのは、コンテンツに対するクレームであったというものであり、現にクレームが殺到していたことは事実である。最たる原因は、日本でのミゼットプロレスが笑いのための芸を交えたコメディ路線を備えていたことにあったと言われている。

当時の選手であったミスター・ポーンは、ザ・ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」に幾度かの出演もしており、会場を大いに湧かせることとなった。しかしながら、「障害者を笑い者にするな」といった声が強まってしまったことにより、ミゼットプロレスの地位向上や知名度の拡散は叶わなかった。

人権団体の圧力があったのではないかという説もあるが、アメリカの事例では確かに差別的であると批判され活動が大幅に縮小された時期があったものの、日本においては実際にそうした団体からの圧力があったとは、特に聞かれていないという。




また、衰退の原因として女子プロレスの台頭も挙げられている。

全日本女子プロレス旗揚げ当時は、女子プロのほうが前座扱いであった。しかし、のちにマッハ文朱(ふみあけ)という人気選手が女子プロから生まれたことにより立場が逆転、ミゼットプロレス側が前座となった。

女子プロ側は、そのような立場となって以後もミゼットプロレスを軽んじることはしなかったものの、女子プロ目的のファンが前座のミゼットプロレスでは席を外すといった場面が多く見られるようになった。

また、ミゼットレスラー側の事情もある。小人症のレスラーたちは、二次障害からか、もともと身体的な脆さを抱えているケースが多く、失明や車椅子生活といった選手も見られた。こうしたことから、リング上での万一の事態を危惧した会社側が、ミゼットプロレスそのものを控えてしまったという事情もあったようだ。

現在、辛うじて団体としては継続しているものの、後継者の不足などに伴い興行を維持できないでいるのが現状であるという。

だが2022年には、女優東ちづるといった有志による支援を受け、ミゼットプロレス再生を目指した新団体「椿ReINGz」が旗揚げされた。今後ミゼットプロレスが、新時代の中で受け入れられる形のエンターテイメントとして返り咲くことを願いたい。

【参考記事・文献】
こびとプロレス復活へ東ちづるが思いを激白「ビジネスエンターテインメントとして盛り上がってほしい」
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/130476
ミゼットプロレスの興亡~知名度を抑えた見せかけのヒューマニズム
https://shohgaisha.com/column/grown_up_detail?id=1375
身長142センチのレスラーがリングに上がる…低身長症の「こびとプロレス」が新団体旗揚げ
https://www.tokyo-np.co.jp/article/179734

(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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