中南米の熱帯雨林が原産のSocratea exorrhiza(ソクラテア・エクソリザ)は一見何の変哲もな樹木だが、「歩くヤシ」という奇妙な通称で呼ばれている。
1980年当時、人類学者のジョン・H・ボドリーとフォーリー・C・ベンソンは、この木は倒木に巻き込まれたり、他の大きな枝の下敷きになったとき、複数に分かれて竹馬のように幹を支えている複数の根を使って姿勢を正し、数メートル「歩く」ことができると発表した。
現代ではこの話は既に定着しており、地元のガイドもこの木は1年で20メートルも移動することができると説明している。
だが、樹木が林床を数メートルも「歩く」ことは本当にあり得るのだろうか?
近年の研究では、流石に「一年で数メートルも歩く」ようなことはないと専門家も見解を示している。この木は新しい根を張ることはあっても、発芽した場所からそれほど遠くには移動しない傾向がある。
高床式の根は、長時間の洪水や林床が大量の瓦礫で覆われたときに、樹木が生き延びるために重要な役割を果たしているのではないかと考えられている。また、根が樹木を安定させることで、地中でバイオマスを成長させるエネルギーを消費することなく、背を伸ばすことができるのではないかと指摘する科学者もいる。
いずれにせよ、樹木が実際に「歩き回る」訳ではないのは確かなようだ。
Ever heard of a walking palm? Socratea exorrhiza, native to rainforests in tropical Central and South America supposedly “walks” from shade to sunlight by growing roots in the direction it wants to travel, and then allowing the old roots to lift into the air and die. pic.twitter.com/hzCbFEti7f
— Harsh Mariwala (@hcmariwala) October 12, 2023
(加藤史紀 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Photo credit: Reinaldo Aguilar on VisualHunt.com