ベトナム・ベトベトです。ベトナムのハノイ北部での怖い話です。
基本ベトナム語がわからない私にとっては幽霊が出ても怖くもなんともありませんでした。下記是非、お読みください。
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はじめに断っておくが、俺は霊感とか一切ない。まして視力が悪いので、実際に幽霊が目の前に現れてもよく見えないと思う。
この話にはオチはない。
ベトナム北部、中国国境に近いタイグエン省と言うお茶の名産地がある。タイグェンは漢字で「大原」と書く。俺がこの省に水力発電の会社を訪ねて行ったときのことである。
大体ベトナム国内では俺は宿は予約しない。いつも行き当たりばったり適当な宿を見つけては安い宿に泊まるのが趣味なのである。何故かと言うと、庶民的な宿に泊まるほどベトナムの一般家庭の生活が垣間見れるからである。これも情報収集の一環だと思っている。
ある時このタイグェン省の山の中で泊まることになった。一泊700円位の小さな宿であった。俺は車の移動の疲れから、酒を飲んでいっぱつで眠ってしまった。
夢を見た。
泊まっている部屋のトイレの前で5歳くらいの女の子が泣いている夢だった。俺は「なんで泣くの?」と聞いたが、彼女はベトナム語で答えたので意味がわからなかった。
すると明け方4時位だっただろうか・・・夢の中の彼女の泣き声にかぶせて2人の女性の会話が聞こえてきたので目を覚ました。何か言い争いをしているような勢いがある会話であった。
まだ夜は開けていないので真っ暗であったが、結構大きな声の会話で、頭の上の方の方向から聞こえてきたのである。
当然ベトナム語であるから意味がわからないので怖くもなんともない。
最初は「こんな夜更けにでかい声で会話するなんて非常識な奴だな」と思ったが、なかなかその会話が止まない。俺は最初、隣の部屋から聞こえているものだと思っていたが、よく考えてみると俺の隣には部屋がなく大きな庭があるだけであった。
ということは「2人の女性が庭でケンケンガクガクやりやっているんだな」っていうことで「朝っぱらから迷惑だな」と思って聞いていた。
しかし、あんまり長く続くので、鍵を開けてドアを開けて庭を見ると誰もいない。眠い目をこすりながら庭のまわりを一周してみたが誰もいない。
すると女性の会話はなんと俺の部屋の方から聞こえてくる。
俺が部屋に戻って中に入ると庭から聞こえる。朦朧としながら俺は考えた。
『ということは、部屋と庭を仕切っているドア付近にこいつらがいるわけだ・・・』
そこで重たいベットをずらしてよく聞くとベッドと壁の間で会話が聞こえる。もちろんベッドと壁の間には人間が入るスペースはない。
あんまり気味が悪いから別室の通訳のフォンに電話した。
「おい起きろ!お化けが出た」
「え、マジですか?どんな姿ですか?」
「声だけだ。やかましくて眠れない、これを聞いてくれ」
俺はベッドと壁の間に携帯電話を入れてしばらく通訳に聞かせた。
「何と言っている?通訳しろ」
「何か『この女の子をどっちが引き取るかで揉めていますね』って言うか、そこに誰か本当に人がいるんじゃないですか?」
「いない!狭いスペースから聞こえる。すぐに来い!」
シャワーを浴びたフォンが来た時にはすでに周りが明るくなっていて女の声は聞こえなくなっていた。
「どこから聞こえましたか?」
「この隙間だ」
「何も聞こえませんが・・・」
「知らん、さっきお前も聞いただろうが?間違いなくここから聞こえた」
「庭で誰かが話してたんじゃないですか?」
「違う、庭にも出て聞いた。その時は部屋から聞こえた」
「そうですか、まあとりあえず聞こえなくなりましたから良かったですね。続きを寝ましょう」
フォンはこのように感動が、あまり無いやつだ。よく知っている。
「わ、わかった。また現れたら呼ぶから通訳頼む」
それ以降声は聞こえなかったし、オチが無いと言ったとおり後日談も無い。
朝食時にフォンに「宿の主にあの部屋で何があったか尋ねてくれ」と頼んだが、「あまり気持ちのいい話ではないからやめておきましょう」とアッサリ断られた。
どうもこいつは不思議に対する原因追求ということに興味がないらしい。
ベトナム・不思議体験であった。
まだあの宿屋はあるのであろうか?
(アトラスラジオ・リスナー投稿 ベトナム・ベトベトさん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
Yêu Việt NamによるPixabayからの画像