雪山で起こった9人の男女の怪死事件「ディアトロフ峠事件」

ディアトロフ峠事件は、1959年に当時のソ連領であったウラル山脈の北部オトルテン山で発生した雪山遭難事件である。リーダーであるイーゴリ・ディアトロフの名前から名付けられたこの事件は、彼を含めた登山チームの男女9名が不可解な死を遂げたことで知られており、ロシアにおいて最も謎めいた事件の一つとも言われている。

不可解であったのは犠牲者となった彼・彼女たちの奇妙な状態であった。数週間後に救助隊によって発見された現場では、テントが内側から引き裂かれ、犠牲者たちは靴すら履いていなかった様子であった。それ以上に奇妙なのは、彼らが異なるバラバラの場所で発見されており、衣服を脱ぎ棄てていた者もおり、また肋骨を骨折していたり頭蓋骨が陥没していたり、中には眼球と舌が失われていた者もいたという。

数々の謎が取り巻くこの事件については、その後数々の憶測が飛び交うこととなった。当初ソ連当局が主張した吹雪・雪崩という自然災害説から、イエティに襲われたとする説、また彼らの残した写真の中に謎の写したものがあることから、UFOやエイリアンの関与を唱える説もあった。


さらには、彼ら登山チームの中に偽名で飛び入り参加していた人物が確認されていたことや、一部の人間の衣服から高い放射線量も検出されたことから、軍の実験に巻き込まれたのではないかという陰謀論的な説までも浮上した。

現在までに、いくつかの事象については説明がなされている。衣服を脱いでいたのは「矛盾脱衣」(極度の寒さの中で逆に暑く感じることで起こる異常行動)と呼ばれるものであり、映画『八甲田山』でも有名になった。眼球と舌については発見までの間に小動物により食べられたのではないかという。

また、近年注目されたのはドキュメンタリー作家ドニー・アイカーが自著『死の山』(2018)の中で述べた「カルマン渦」説だ。障害物にぶつかったことで発生するこの渦により低周波が発生し、その影響で彼らは幻覚やパニックを起こし靴も履かずにテントを損壊して飛び出したのではないかというのである。

さらに2021年には、EPFL雪崩シミュレーション研究所ジョアン・ゴームとスイス連邦工科大学地質工学教授アレキザンダー・プツリンが、「スラブ雪崩」説を提唱した。雪崩説については、「そのような痕跡がない」といった理由からこれまで何度も否定されてきた説であった。スラブとは固まって板状になった雪の層のことを言い、固まっていない雪の層の上に乗った雪塊が壊れて滑り落ちるというのがスラブ雪崩だ。




この事件でテントを襲ったのはこの5メートルほどの小規模の雪の塊による雪崩であり、コンピュータモデルからは、人間が肋骨と頭蓋骨を損傷するには、このレベルの雪塊で充分足りることも実証されたという。

ディアトロフ峠事件は、多くの要因が重なった不幸な出来事であることは間違いないようだ。しかしながら、放射線量が多く検出されたという問題については、いずれの説においても納得のいく説明がなされていないのも現状である。このことについては、この事件より数年前にウラル山脈で放射能漏れ事故が発生しており、その際に放射線を浴びた衣類が古着屋に売られてそれを被害者が購入したのではないかという説もある。

そうはいっても、やはり特定の被害者からしか検出されなかったという謎は氷解していない。いっときは機密にまでされていたこの事件は、まだまだ全容が解明されていないのが現状である。

【参考記事・文献】
朝里樹『世界現代怪異事典』
歴史の謎を探る会『世界怪異事典』
女子大生は舌を抜かれ、放射能まみれで死んでいた…男女9人が変死体で見つかった「不可解な遭難事件」の真相
https://president.jp/articles/-/69866#goog_rewarded
ディアトロフ峠事件の真相ネタバレ!原因はカルマン渦(ヘアピン渦)?アナ雪との関係は?
https://attack25.jp/deartrof-incident/#index_id12
ディアトロフ峠事件とは? 9人が変死した「世界一不気味な遭難事故」の謎を解くヒントは『アナ雪』だった
https://www.huffingtonpost.jp/entry/frozen-mystery-of-dyatlov-pass_jp_601b4f64c5b6c0af54d0a710
60年前のロシア雪山怪死事件、新検証で「自然現象説」有力
https://www.afpbb.com/articles/-/3329360

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(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

Photo credit: Mr.Ran. on VisualHunt.com

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