オーパーツ

人々を翻弄させたオーパーツ「水晶ドクロ」は古代の遺物ではなかった・・・

その時代に技術レベルにはそぐわない「場違いな出土加工品」いわゆるオーパーツは、インドの錆びない鉄柱、コロンビアの黄金シャトル、アンティキティラ島の機械など世界各地でさまざまに発見されている。その中でも、「クリスタル・スカル」あるいは「水晶ドクロ」と呼ばれるオーパーツほど人々を魅了し広く知られるようになったものはないだろう。

水晶ドクロは、その名の通り水晶で作られた精巧な頭蓋骨の模型のことである。世界各地で発見されており、アステカやインカといった文明、特にマヤ文明の秘宝と称されている。パリ人類博物館の「パリ・スカル」、スミソニアン博物館の「カース・スカル」、大英博物館の「ブリティッシュ・スカル」、といった博物館にて保存されているものも多く、中でも特に知られているのは、イギリス人のミッチェル・ヘッジスという人物が、メキシコのルバアントゥン遺跡にて発掘したと言われている「ヘッジス・スカル」と呼ばれる水晶ドクロである。


水晶ドクロは1970年に一度鑑定が行なわれており、その際「加工痕が見当たらない」ということ、そして「古典的な磨きを行なっても300年はかかる」という驚くべき結果が打ち出された。更にいつの頃からか、2012年までに世界各地の13個の水晶ドクロをすべて集めると、世界の真理・叡智が得られるという噂が出回るようにもなった。

このように注目を集めることとなった水晶ドクロであるが、2000年代になってからは強く疑いの目が向けられることとなった。2008年にヘッジス・スカルの鑑定が最新鋭の機材によって行なわれたのだが、その表面にはダイヤモンド研磨剤の痕跡が見られ、近代になって加工された物であることが明らかとなったのだ。その他、各博物館に所蔵されている水晶ドクロについても、合成研磨剤といった同様に近年の技術で加工された痕が確認され、これら全ては古代の遺物でないことがほぼ確定されたのである。

こうした水晶ドクロについては、作られた地域の特定も進められた。その一説として、15世紀からメノウや水晶が多く発見されたことで宝石加工の町として栄えた、ドイツ西部にあるイバー・オーバーシュタインで作られた可能性が高いという。現在では、注目を集めようと目論んだ古物商によって製作者が大っぴらに名乗り出ないような職人に依頼して作られた工芸品であるという説が有力であるようだ。




他の多くの水晶ドクロについても、現在所在が不明であるものなど怪しい情報のものが多い。そもそも、世界に13あると言われている水晶ドクロであるが、その噂の時点で20個近くが確認されていたとも言われている。もっとも、この水晶ドクロを集めるという話は、2012年に人類が滅亡するといわれた「マヤ暦」の予言に影響を受けたものであったと考えられている。こうしてオーパーツとしての水晶ドクロは、ことごとくその神秘性を失うこととなってしまった。

こうした結果によって、水晶ドクロは遺物として否定されることとなったが、巷では「偽物だった」と称されることが多い。単なる言葉の綾であるかもしれないが、偽物と言うからにはこれは「本物」の存在を想定しているということに他ならない。超古代文明の遺物として否定してはいるものの、オーパーツとしてのわずかながらの期待がその心理に残っていることの表れなのかもしれない。

【参考記事・文献】
オーパーツの代表格水晶髑髏の謎について
https://chahoo.jp/crystal/
クリスタルスカル(水晶ドクロ)はオーパーツではなく偽物と判明!
https://cherish-media.jp/posts/11859

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(黒蠍けいすけ 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

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