ホラー映画、ゲーム、テレビ番組の定番となり、もはや一ジャンルを築いているともいえるクリーチャー、ゾンビ。どの作品でも何らかの要因で人間がゾンビ化する現象が発生、世界が破滅に向かっていくが、実際に現代社会でゾンビ・アポカリプスが発生したとしたら、どれくらいの速さで蔓延していくのだろうか・・・
この度フィンランドのアールト大学の研究者たちが、ゾンビウイルスが一都市で蔓延するのにかかる時間を調査して割り出すという興味深い研究を行った。
これまでにもゾンビウイルスが発生したと仮定した類似の研究は行われてきたが、今回のシミュレーションでは、個々の人間とゾンビが街の中と外の両方を動き回るという状況を含んでいる。その上で、フィンランドの首都ヘルシンキで発生した場合を仮定してシミュレーションが行われた。
その結果は、控えめに言っても恐ろしいものだった。ヘルシンキ市内で1回発生した場合、わずか7時間のうちに街全体がゾンビに蹂躙されることになるというものだった。
「驚くようなことではないのですが、人口を維持するために私たちがいかに迅速に対応しなければならないかに驚きました」と、研究の筆頭著者であるパウリナ・イルモネン教授は語る。
ちなみに、現実には存在しないゾンビウイルスの発生とその広がりを計算すること一見役立たないように思えるかもしれないが、もし実際にそれだけ恐ろしい感染力をもったウイルスの拡散と、蔓延を阻止するための判断材料として役立つという。2019年に発生した新型コロナのパンデミックを踏まえると、確かに今後重要になってくることだろう。
ちなみに今回のシミュレーションでは一部の “ゾンビ否定派 “に警告を無視させるなど、個人の行動を反映させた上でシミュレートを行ったため、偽情報が伝染病の蔓延にどのような影響を与えるかについても判断材料になるとのこと。
「個人の権利と集団の権利のような道徳的な問題について考えさせられました」と研究チームは述べる。
論文にて、研究者らは「このゾンビ・ペスト・シミュレーションは、さまざまな介入の効果を検討し、拡散の速さや重症度など、さまざまな特徴を持つ疾病の文脈でそれらを検討する方法を提供します」と締めくくった。
(勝木孝幸 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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