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閻魔大王以上に重要な存在?!寿命の帳簿を持つ冥界の王「泰山府君」

泰山府君(たいざんふくん)は、道教で信仰される神であり、中国山東省に存在する山「泰山」の神と言われている。

泰山は、死者の霊が集まる霊山として民間から信仰されており、そのことから泰山府君は「冥界の王」とも呼ばれている。京都市左京区にある赤山禅院(せきざんぜんいん)では、赤山大明神という名で泰山府君が本尊ともなっている。

死者の魂が帰る場所としての霊山は中国各所に存在していたが、泰山は特にその総本山とされていた。泰山府君の「府君」とは組織の長官職を意味していることから、「司命」「司禄」といった部下もおり、各所の霊山への連絡送達を行なうネットワークが組まれていたとされている。

泰山府君は、人々の寿命が書かれた帳簿を持つと言われていた。そのため古代中国の人々は、泰山府君に供物をささげることで帳簿の寿命を書き換えてもらい、「病気平癒」や「延命長寿」を祈ったという。その後に仏教と道教が融合したことによって、泰山府君は死後に六道の行き先を決定する十王の一人、すなわち閻魔大王の下に就く「泰山王」となった。

日本に渡った泰山夫君の信仰は、その後陰陽道において主祭神として崇められた。その中でも、安倍晴明にまつわる話として知られる次のような話がある。第66代一条天皇が病に罹った時、仏教の僧侶と安倍晴明が呼ばれることとなった。僧侶は仏に願う法によって病を治そうとしたが、安倍晴明は地獄に頼む方法をとった。




それは、まさしく泰山府君に願うことによって寿命の帳簿を書き換えてもらうというものであった。この方法はのちに『泰山府君祭』と呼ばれる安倍晴明が得意とする祭祀となり、それと同時に陰陽道における国家の重要な祭祀とされることとなった。

また、泰山府君は密教においても閻魔に次ぐナンバー2とみなされており、『焔羅王供行法次第』(えんらおうくぎょうほうしだい)という経文には、「閻魔大王に死籍(死者の名が書いてある戸籍)から生籍へ移し替えてもらうには泰山府君の呪文を唱えよ」と記されているという。泰山府君が、いかに冥界で重要なポジションに属しているかが窺い知れる。

泰山府君への帳簿の書き換えにまつわる伝承はいくつも存在する。その方法については祈願もそうだが、手違いなどによる恩情や、時として賄賂といった不正な取引によって蘇生するという逸話も存在している。いうなれば、やりようによって自身の寿命を自由に変えてもらうことができるということだ。

古くから人々の信仰では、長寿を祈願するのが道理であるだろうが、現代の日本では果たしてどうだろうか。日本で拳銃の所持が許可されたら、無差別殺傷よりも自殺者数が多くなるというブラックジョークがあるが、もし泰山府君の信仰が現代日本で根強いものになっていたなら、逆に生籍から死籍への書き換えを願う人が増えてしまうのではないかと心配になる。

【参考記事・文献】
・山口敏太郎『図説 世界の地獄案内』
・伊藤清司『死者の棲む楽園』
・泰山府君祭―国家の大祭として伝えられてきた宮廷祭祀
https://yamimin-planet.com/taizanhukunsai/

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画像 ウィキペディアより引用