スピリチュアル

西洋魔術の方向性を決定づけた魔術結社「黄金の夜明け団」

黄金の夜明け団とは、1888年にロンドンで創立された魔術結社であり、現在のイギリス・アメリカに繫栄する無数の魔術結社の源流とも言われている。

薔薇十字伝説、錬金術、占星術、タロットカードなどあらゆる秘教をまとめて総合した魔術体系を作り上げ、中でもヘブライの秘教哲学「カバラ」を骨子の教義としている。その魔術体系は、現代に至るまでオカルティズム(神秘学)の主流の一つとして影響を与え続けている。

1887年、英国薔薇十字協会会員であったW・ウェストコットが、友人である牧師A・ウッドフィールドから60枚に及ぶ謎の「暗号文書」を受け取った。それを解読すると、ドイツのある結社における入門儀礼のメモであったことがわかった。ウェストコットは、その内容を基盤とする独自の結社の創立を決心し、同協会会長のR・ウッドマン、オカルティストのM・メイザースと共に3人の働きによって黄金の夜明け団が創設された。

黄金の夜明け団そのものについては、いわばサロンや同好会のような場であったとも言われているが、入団には特別な整備がなされていた。参入志願者には、願書を額に当てて瞑想するといったサイコメトリーや「アストラル・ジャッジメント」といった適性検査を行なう。入団が許可された者は入門儀礼を受け、魔法名を与えられ数々の誓約を立てられる。

入団後は、占星術、ヘブライアルファベット、初歩的カバラなど修得の課題が与えられ、試験ごとに階級の昇進などもされるといったものであった。のちに100人を超えた在籍メンバーの中には著名人も多く、魔術師として知られるアレイスター・クロウリーも在籍していたことがある。




しかし、個性の強いメンバーが参入したことによる衝突が相次いだことにより、主要メンバーの退団や追放、団体内の派閥抗争などが頻発した。のちに「暁の星」、「聖黄金の夜明け団」(暁の星からさらに独立した団体)、「A∴O∴(アルファオメガ)」へと団体は分裂していくこととなり、1950年までにはいずれの団体も消滅することとなった。

これらの団体の消滅に拍車をかけたと言われるのが、魔術書『黄金の夜明け』という出版物である。暁の星に加入していたI・リガルディが、魔術への知識不足と資料の散逸といった団体の有様に落胆し、秘儀の洗いざらいを白日の下にさらす形で、全4巻からなる『黄金の夜明け』を、なんと独断で出版したのだ。

この出来事は、関係者からの非難が殺到したほか、秘教性を固持して成り立っていた団体の衰退を招く結果をもたらした。一方でこのことは、秘儀とされた魔術を誰でも知る得ることが可能になったことで、リガルディの功績と捉える向きもある。いずれにせよ、今でもこのことについては賛否両論であると言われている。

黄金の夜明け団創立者ウェストコットがこれを目の当たりにしていたとしたら、どちらを望ましいと考えただろうか。

【参考記事・文献】
・江口之隆/亀井勝行『世界魔法大全第1巻 黄金の夜明け』
・黄金の夜明け団とは?イギリス発祥の隠秘学結社について解説
https://amaterasu49.com/media/spiritual/1730/

【アトラスニュース関連記事】

【アトラスラジオ関連動画】

(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像 ウィキペディアより引用