This manとは、不特定多数の人間の夢の中に現れる謎の人物である。ビーズのような黒い目、ふさふさの太い眉毛、薄い唇にやや大きめの口、後退した生え際をもった顔の男性であり、インターネットを通じてこの人物のイラストが拡散された。
2006年、アメリカの精神科医がとある女性患者から、夢の中に一度も会ったことのない知らない男性が現れるという報告を耳にした。精神科医は証言を基に男性の顔をモンタージュ作成したが、しばらく忘れてしまっていた。しかし数日が経ち、別の患者から同様の報告がなされ、特徴を聞いたところ女性患者が見た男性と同一のものであることが判明した。
不思議に思った精神科医は、この謎の男のモンタージュ画像をネット上に公開し、夢の中で出会ったことがあるかを募ったところ多数の問い合わせが寄せられ、およそ世界各地で2000人以上もの人間が出会ったことがあるという結果となった。
謎の男性は「This man」と称され、現在もなお広く知れ渡る存在となっている。
This manの挙動は、一言も発しないが常に傍にいる、私生活の助言をしてくる、追いかけられる、建物の中で迷っているところを笑顔で出口を教える、といったもので大きな危害を与えてくるものではなかったという。
その正体については、人類の無意識下にこの男性の顔が存在しているという集合的無意識、神もしくは神の啓示を我々に伝える存在、人々の夢に介入することのできる特殊な能力をもつ人物、といった様々な説があがっている。中には、男性の平均顔であるため、夢の中の曖昧な記憶がThis manのイラストに誘導されているのではないか、といったものもある。
しかし、のちにThis manは、製品やサービスを低予算で促進するために型破りな広告戦略を行なう「ゲリラ・マーケティング」とつながっていたことが判明した。このマーケティングに関わっていた企業は、主にフェイクニュースを扱っており、This manはミームとしての伝播を目的とした実験であることがほぼ確定となった。しかし、This man自体が何を広告としていたものかについては、今でもハッキリとはわかっていない。
This manの顔はインパクトが強く、架空とわかった以後も実際にThis manを見たという報告があるという。それは、This manの顔が絶妙にアンバランスなパーツの組み合わせとなっており違和感を覚えるものになっていることも要因だろう。
かの『モナ・リザの微笑み』は、左右の目の視線や唇の左右で感情が異なっているといった細工が施されていることは有名であるが、これは一見して違和感を抱くもののその違和感が明確にならないと何度も見返してしまうという心理を利用しているのではないかとも言われており、This manもそれと同様な効果が施されている可能性がある。
それはある種、我々がThis manを知ってしまったが最後、決して彼から逃れることができなくなることを意味しているのかもしれない。
【参考記事・文献】
・朝里樹『世界現代怪異事典』
・This Man (Ever Dream This Man)
https://knowyourmeme.com/memes/this-man-ever-dream-this-man
【アトラスニュース関連記事】
(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像 https://www.thisman.org/ より引用
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