阿波狸合戦は、江戸時代末期に阿波国(現在の徳島県)で起こったとされる、狸たちによる大戦争である。のちのジブリ作品『平成狸合戦ぽんぽこ』のモチーフになったとも言われている逸話であり、狸伝承の残る四国の中でも特に有名なものであると言われる。
幕末のある時、小松島の日開野で染物屋(大和屋)を営む茂右衛門が、人々からいじめられている狸を助けた。その後に、万吉と名乗る人物が大和屋で働き始めると、どんどん店が繁盛し始めた。実は、助けられた狸は「金長」という頭領狸であり、万吉にとり憑いて恩返ししていたのだ。
しばらくして、金長は津田の狸の総大将「六右衛門」のもとに修行へ出ることとなった。「正一位」のため修行に励んだ金長は抜群の成績をあげていったという。一方、金長を手放せば恐るべき敵対勢力になると危惧した六右衛門は、娘の婿養子になることを持ちかける。しかし、奉公が済んでいないという義理と六右衛門の残虐性を見極めた金長はこれを拒んだ。激怒した六右衛門は家来と共に夜襲を加え、その時金長の仲間であった「藤ノ木寺の鷹」が殺されてしまう。
以降、これが火種となり「阿波狸合戦」が勃発、勝浦川へ集結した両軍600匹に及ぶ狸たちの三日三晩の死闘が繰り広げられたという。結果は金鳥が六右衛門を食い殺し勝利したものの、金長自身も傷を負い間もなく命を落とした。大和屋の茂右衛門はこれを哀れみ、「正一位金長大明神」として祀ったと言われている。
阿波狸合戦は、講談や映画化などで広く世に知れることとなった。異説もいくつか存在しており、六右衛門の娘の悲恋に絡むものや息子による二代戦争など、かなり込んだ愛憎劇として語られることもある。また、津田と小松島の漁業権をかけた実際の抗争がモデルではないかとも考えられていることから、伝承に一際深みを与えるものとなっていった。
徳島県小松市には、金長大明神を祭神とした「金長神社」がある。この神社は、映画「阿波狸合戦」(昭和14年公開)のヒットを記念して建立されたものだ。金長神社は、近年に取り壊しの危機もあったが、国内外からの1万を超える署名によって2021年に存続の方向でまとまったという。このように金長の存在は、町おこしにも一役買っているほどに大きい。
数ある狸伝承が残る中でも、これほど多くの人々から愛された狸はないだろう。
【参考記事・文献】
・平成狸合戦ぽんぽこのモデルは徳島にあった?阿波狸合戦を徹底解説
https://omatsurijapan.com/blog/ponpoko-awatanuki/
・義経上陸の地・小松島市に伝わる「阿波狸合戦」の真相とは?
https://www.rekishijin.com/19076
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(にぅま 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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