
ATLASでもたびたび紹介している人の生き血を吸う怪物(モンスター)「吸血鬼」。そんな吸血鬼が実際にこの近代において、しかも1981年のイタリアに現れていたことをご存じだろうか。
1981年8月20日の朝日新聞に「獄中で殺し生き血を吸う」という、衝撃の見出しで記事が掲載されている。
それによると、事件が発生したのはイタリアはサルジニア島の刑務所で、ピンチェツオ・アンドラウスという地元の暴力団事務所のボスが同じ獄中にいた囚人を殺害し、その生き血を吸ったというのだ。同じ獄中にはアンドラウスと敵対関係にあったギャングメンバーが先に入獄しており、獄中での揉め事の末「殺し合い」に発展したという。
記事によると、アンドラウスによる相手を殺害した方法というのが残酷そのもので、相手を殴り殺したうえ、獄中の仲間と一緒に腹を引き裂き、内蔵を引っ張り出したうえに、歯で噛み切っては血をチュウチュウと吸いだしたらしい。
当初は同じ監房には他の囚人もいたたことで、彼らがこの残虐行為にたじろぐかと思われた。しかし、この殺された相手というのが日本でいうところの「牢名主」のような人物であり、獄中での傍若無人な振る舞いに対して恨みを持つ者が多かったという。そのために、アンドラウスの手により惨殺されたことで留飲を下げた彼らは、死体の周りをグルリと囲み「死の舞踏」を踊り、一緒になって生き血を吸ったというのが事実らしい。
本件は牢屋という密閉された場所ゆえ、善悪の判断がつかない精神状態になっていた可能性が高く、一種の宗教儀式、カルト殺人のような事件になってしまったようだ。
イタリアの牢屋に出現したリアル「吸血鬼」。その正体は、世間から隔離された密室という場所が作り上げた「怪物」だったかのだろうか。
(文:穂積昭雪 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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