1991年9月19日、オーストリア・イタリア間の国境にある標高3200メートルのアルプス・エッツタール渓谷にてある一体の男性のミイラが発見された。このミイラは「アイスマン」という俗称がつけられ、ヨーロッパ最古の自然ミイラであり、世紀の発見として世界で報道された。
アイスマンの死亡時の年齢は45歳前後と考えられており、肩からの矢や頭部への打撃など、複数の致命的な負傷が重なって死亡したようだった。そのため、敵対する部族と小競り合いをした襲撃隊の一員であったとも考えられている。
2012年に行われたアイスマンの遺伝学的研究では、彼はカスピ海のステップ出身の祖先を持つことが示唆されたものの、このミイラは推定5300年前のものであったため、あまりに年代が古すぎるので鑑定結果が正しいとは言い切れなかった。
しかしこの度、新たな研究によりアイスマンが新石器時代の農民によるものであることが明らかになった。また、肌の色は浅黒く、男性型の脱毛症を患っていたと考えられている。
今回の分析について、ドイツのライプツィヒにあるマックス・プランク進化人類学研究所の考古遺伝学者ヨハネス・クラウス氏は「私たちは常に、 (ヨーロッパ人が) ずっと早く肌の色が薄くなると想像してきました。しかし今では、これは実際には人類の歴史のかなり後期に起こったことのようだ。4万年前から8000年前のヨーロッパに住んでいた人々は、アフリカの人々と同じくらい黒かった。(アフリカは) 人類の起源であるため、これは非常に理にかなっている」と述べている。
長い間氷付けになっていたミイラ、アイスマンと彼の祖先に関するこれまでの研究結果は大幅に違っていたようだ。今後、更なる発見があるのではないかと研究者らは期待しているという。
The 5,300-year-old frozen mummy known as Ötzi the Iceman was balding, dark-skinned and had different ancestors than scientists once thought.https://t.co/vg7NeUTHA8
— Science News (@ScienceNews) August 16, 2023
(田中尚 山口敏太郎タートルカンパニー ミステリーニュースステーションATLAS編集部