スピリチュアル

「警備隊後日談」

こんにちは。ゲリー板橋でございます。

電話インタビューをして頂きました、警備奇譚には後日談があります。お話を聞いてくださったご縁で、少しだけお付き合いのほどを願えればと思います。

私と隊長が、お話をしました某企業の技術の本店ビルに着任していたのは実は二年足らずの短い期間でありました。私と隊長と書きましたが、では他の隊員はどうであったのかと申しますと、二年足らずの間で13人が入れ替わっていました。

急な異動、不可解な不正による退職、身体を壊して入院し戦列を離れた人、様々な個人的な事情により退職をした人等。それにしても入れ替わりが激しいと、当時の私が所属していた警備会社では私と隊長は、ちょっとした会話の有名人であったそうであります。

我々と組むと、ろくな事にはならない、とも何かが身の回りにも起きるとも言われていたようです。

それは、さておき、敏太郎先生はチョウバエをご存じでしょうか。よく洗面所や台所、鉢植えの回りにいるハエに似た虫です。便所バエやコバエといった方がわかりやすいでしょう。

機械にとり憑かれたMさんが去り、秋の声が聞こえる頃に彼等は現れました。地下二階にある機械室の外側の壁に初めは数匹止まっていました。虫が館内に現れるのは別に珍しい事ではなく、殺虫剤で駆除していましたが、日を追う事に彼等は増えていき、壁の半分を覆う程に勢力を増しました。

駆除と増殖のいたちごっこが続きました。水回り等、何もないのに。

業者を呼ぶ事を検討していたある日の夜警の事、早寝のメンバーと交代した私はドーンという館内に響きわたる音を聞きました。対人センサーには異常はなし、火災警報装置にも異常はなし。あれほどの音にも関わらず、同僚は目をさましません。

この時、私は同僚をお超すことなく、巡回も実施しませんでした。自分の意識に、朝になれば判る、行く必要はない、の言葉というより意思のようなものが入ってきたからです。

早朝、巡回を実施しますと何も異変も異常も認められませんでした。私が下番した、その日、例の宿直室の和室に異変がおきました。畳に水をこぼした訳でもないのに、畳が湿り、壁の表面も水分を含んだ湿りが起きたというのです。部屋全体がカビくさいにおいに覆われました。

もっともこの部屋を使用していたのは、私と隊長くらいで他の隊員や社員さんには支障はありませんでした。

その翌日は、私と隊長が上番しました。今度は宿直室の壁にヒビが入り、壁はポロポロとパズルのピースのように崩れ、そこから水がチョロチョロと流れ始めました。畳は全体が完全に水で湿り、畳を持ち上げるとコンクリートの床からも水が涌き出ていました。

翌日は私も隊長も下番する事なく対応に追われました。部屋の壁や床から涌き出た水が部屋の外にまで流れ出したからです。本部に連絡後、施工業者にも来てもらい調べてもらうと地下の壁の横に水がたまっているとの事でした。

工事を行う事になり、宿直室は閉鎖になりました。実はチョウバエが出現したあたりから、警備隊にも異変が起きていたのです。詳しく話せませんが、警備会社内部の様々な対人的な軋轢から隊長が上層部から責められていたのです。

隊長はちょっと変わった人でしたが、人間的にも素晴らしい人で、間違っても不正等を働く人ではありません。いわゆる内部事情です。

宿直室水没の数日後、隊長は異動になりました。私も副長でしたので連座して数日後に異動になり警備隊を去りました。

幕切れはあっけなく訪れます。

不思議な事にあれほど大量に発生していた、チョウバエ達も宿直室水没と共に姿を消しました。全てが偶然だとは思いますが、なぜ偶然がこうも符号するのかは私にはわかりません。私にはチョウバエの出現も宿直室水没も、あの早朝の音も、このビルが、私と隊長が去る事がわかっていて、別れを惜しんで起こしたような気がします。

そんな事等、あり得ない事はわかっていますが、二年という月日は短いにせよ、愛着は幻想を伴うものです。

その後、我々が去った後は宿直室は閉鎖され工事に入り、地下には大量の雨水らしい水がたまっていたようです。警備隊もメンバーが入れ替わる事なく、某企業との警備契約が切れるまで同じメンバーで任務につきました。HGホテル1107 号室の話をしてくれたOさんも同じ隊で、彼はその後も隊に残りましたが奇妙な事は何も起きていないと言っていました。




インタビューの時に話しましたが、この某企業ビルには、社員さんが話しをしてくれましたが、怪談話もなければ怪異も起きないと言っていました。機械にとり憑かれた、Mさんも、見える人でしたが、この場所には何も感じるものはない、と言っていました。

なのに、奇妙な事は起きたのです。

同僚の一人が、よく誰もいないのにエレベーターの開閉する気配がする、と言っていました。早朝、誰もいないのに一階にあるエレベーターの一基が上昇した、と言っていましたが事故にはなりませんでした。

私と隊長以外は水没した宿直室を嫌な感じがすると使いませんでしたが、私と隊長はよく眠れるので使用していました。私が宿直室を使用したのは警備機器の音がしないからでもありましたが、きっかけになる夢があるからです。

ある夜、私が交代して警備室の仮眠室で寝ていると枕の横に、黒いカラスが現れました。カラスは首をくるくると回しています。カラスの後ろには大勢の子供達がいて、私の方を見て笑っている、夢です。

私は大声で、何かを言ったらしく同僚が起こしてくれました。

それから、宿直室を利用するようになったのですが、私の友人がこの話を聞いて、皆が嫌がる場所が、一番、安全なのかも知れないな、と言っていたのが印象に残ります。この某企業ビルも移転して、ビルは取り壊され、この世界にはありません。

私の記憶の中にのみ、存在しますが、また隊長や、入れ替わりは激しかったですが、気のあった同僚達や機械男のMさんと上番してみたい、と叶わぬ願いですが、よく思うものです。奇妙な出来事や、メンバー入れ替わりのハリーキャラハン現象は私と隊長が原因だったのかも、とふと思い、笑ってしまう事があります。

後日談というより、あっけのない終わり方の話になってしまいました。お話にお付き合いくださり、ありがとうございます。

それでは、また。

(アトラスラジオ・リスナー投稿 ゲリー板橋さん ミステリーニュースステーションATLAS編集部)