高校を卒業してすぐのことです。親友の裕香、綾と三人で旅行に行く話になりました。
急きょ、裕香は家族と海外旅行に行くことになったために、私と綾が裕香の別荘を貸してもらうことになりました。しかし未成年の女子だけだと危ないということで、綾の両親と綾の小6の弟も一緒に行きました。
別荘に到着し荷物を置くと、綾と私は別荘に残こり、綾の両親と弟はスーパーへ食材を買いだしに出かけました。
私はお風呂を沸かしていると、突然「ピチャピチャ」と音がしました。
『お湯でも溢れたのかな?』
急いで風呂場に向かうと、長くて白い髪の毛が湯船に浮かんでいたのです。
ビックリして思わず風呂場から飛び出ました。
私が恐怖のあまり凄い顔をしていたためでしょうか。綾が「どうしたの?」と心配そうに聞いてきました。
その時、私は『このことは言ってはいけない』と思いました。綾や綾の家族はもちろん、別荘を貸してくれた裕香に悪いと思ったからです。
それから不思議とおかしな現象も特になく、私たちは楽しく過ごしました。
二泊三日の小旅行、三日目の明け方のことでした。
綾のお母さんの声で「だからじゃない!ダメだ!ダメ!ダメ!」と大きな声が居間から聞こえたのです。どうしたのかと思い、綾と一緒に見に行くと、冷蔵庫に入れた食材が抹茶色になり、液体まで垂れるくらいにとても汚くなっていました。たった三日だけなのに・・・。
「食材、駄目になっちゃったからさー、早めに外出して何処かで食べよう!」
車で別荘を後にしましたが、私は『ああ、綾のお母さんは何かを見たのだな』ととっさに思いました。
数日後、綾から聞いた話ですが、綾のお母さんが冷蔵庫を開けると白髪だらけの女性が「だからー」と呟きながら、中からヌーッと現れたそうです。
その白髪の女性は皺だらけでしたが、顔はまさしく裕香だったそうです。
(夏目夢子 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
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