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古典落語が本当に!?昭和に発生した、リアル『抜け雀』





古典落語のひとつに『抜け雀』という噺(はなし)がある。

東海道小田原宿の宿屋に金のない絵描きが泊まり、お金の代わりに宿にあった衝立(ついたて)に5羽の雀の絵を描き置いていったところ、翌朝、衝立から絵の雀が飛び出し、宿屋の主人はびっくり仰天。宿は押すな押すなの大繁盛……というお話だ。

「一休さん」の『屏風の虎』しかり、どうも昔の日本人は今以上に「絵に描いた動物が現実になる」という空想を日々行っていたようだ。

さて、そんな『抜け雀』を地で行くような珍事件が第二次世界大戦から数年後の京都で発生していた。




1950年(昭和30年)2月10日の朝日新聞によると、2月9日京都府にある東本願寺の大寝殿の襖に描かれた絵から、2羽の雀が突如「行方不明」になる珍事件が発生した。

もっともこの事件は、落語のように襖の雀が突然、生を受けて逃げ出したというわけではない。東本願寺を訪れた参拝客の一人がこの襖に描かれた雀の絵をたいそう気に入り、ハサミでチョキチョキと円形に切りとって持ち帰ってしまったというが真相である。

この絵は、明治期の著名な画家・竹内栖鳳(たけうちせいほう)の手によるもので、昭和9年に完成した非常に高価なものであったという。




竹内栖鳳は多くの動物の絵を描いており、当時から高価な値段で売れていたことから窃盗団のターゲットにされてしまったようだ。現在でもこの切り取られた雀の所在は明らかになっていないようであるが、誠に腹立たしい事件である。

事件から既に70年近くが経過しているが、雀の絵を持ち帰った不届きな盗人は『舌切り雀』のお婆さんのようには改心はしなかったようである。

(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)

画像『竹内栖鳳の画手本 (1978年)