世界各地の妖怪を見ていくと、他の地域にはない独特の造形や特徴を持った妖怪が出てくる事がままある。
フランスの沿岸部に生息しているというル・カルコル、「海の蝸牛」もその一つと言えるだろう。
ル・カルコルはフランス南西部のガスコーニュ地方に伝わる巨大なカタツムリと、蛇のような特徴を併せ持った怪物である。海岸の近く、地下に続く洞窟に身を潜めており、背中にはカタツムリの大きな殻、体からは繊毛の生えた長い触手が生えており、ネバネバした粘液で人などの獲物を絡めとって巨大な口で飲み込んでしまうとされていた。
また、同じフランス人のアンブロワーズ・パレは著作で黒海周辺に生息するという別の「海の蝸牛」について記している。彼の著作『怪物と驚異』に挿絵とともに紹介されているもので、一見大きなカタツムリのように見えるが4本のヒレ状になった足があり、大きな目と口元に長いひげが沢山生えている。
また、カタツムリの目があるはずの場所には鹿の角のように枝分かれした触手が2本生えており、先端には真珠に似た球体が複数ついていて、光を放つとされていた。
パレの著作によると、この生物は一見恐ろしく見えるものの、臆病でおとなしいとされていた。水陸両方に適応しており、殻の中の肉は非常に美味で滋養に良く、体液はハンセン氏病に対する薬効を持っているとされていた。
このような生物が実在したのかはわかっていないが、もしかするとフランス南西部に伝わるル・カルコルの伝説と、現地の怪物の話からこのような生物を描き出したのかもしれない。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)