1996年11月19日、イギリス・シュロップシャー州にあるウェムタウンホールという歴史ある建物で火災が起こった。結果、1905年に建立されたビクトリア様式で赤レンガ構造の歴史的建造物は、灰塵に帰してしまった。
幸い死者はひとりも出なかったが、不気味なことが起こった。カメラマンのオライリー氏が道路の向こう側から200ミリメートルレンズを使って火災現場を撮影した写真に炎に包まれる少女が写り込んでいたのだ。
消防士たちが火事を消すために建物を取り囲んでおり、誰も火災現場にはいなかったはずなのに、はっきりと少女が写りこんでいる。この写真をヴァーノン・ハリソン博士が解析したが、写真のネガには細工の跡が見当たらない。困惑した博士は燃えた木材の陰影が人間に見えるのではないかと結論を出した。
実は、300年前の1677年3月3日にも同ホールでは大きな火災があったらしく、14歳の少女・Jane Churmが、床に落としたロウソクが原因で発生したとされている。この少女は、この際死亡しており、燃え盛る業火は町の大部分を焼き尽くした。少女の幽霊はその後も町のあちこちで目撃されたらしく、この少女幽霊こそが写真に写りこんだ幽霊の正体ではないと推測された。この騒動は、世界中で物議を醸し、観光客が数千人、この町に押し寄せる結果となった。
その後、2005年5月17日に、地元新聞『Shropshire Star』が、この心霊写真はニセモノだったと報道した。新聞の読者・ブライアン・リアさんから、心霊写真の少女は”絵葉書写真の中の少女”と酷似していると指摘が届いたのだ。この葉書は、1922年頃のウェムの街並みを写したもので、画面に向かって左下に、心霊写真の少女幽霊とそっくりな少女が写りこんでいるのだ。撮影したカメラマンは2005年に亡くなったが、最期まで写真は本物だと主張していた。
なお、近年になって改めて写真を確認してみると、少女の部分と背景の燃える家の部分に明らかな差異が発見され、切り貼りで合成したものを用いたトリック写真であるという結論が下された。ちなみにこの検証は過去に日本のテレビ番組でも行われ、フェイクであるとする結論がしっかりと放送されている。
それでもなお、この写真は未だに「本物の心霊写真」として紹介されているのである。