人間の生き血を吸い、永遠の命を持つとされる西洋の妖怪「吸血鬼」。フランケンシュタインの怪物や狼男とともに、世界的に有名なモンスターなのだが、実は昭和時代に発行された新聞数誌を探ってみると、げに恐ろしき吸血鬼がこの世に実在していたかのような記事を見かけることがある。
今回、ご紹介するのは1949年(昭和24年)3月5日の朝日新聞の朝刊に掲載された記事である。「ロンドンに吸血鬼ストローで血をす々る中年男」という見出しでイギリスはロンドンに本物のバンパイアが現れたというトピックを扱っている。
記事によると、ロンドンで世にも恐ろしい吸血男が捕まったとある。男は39歳のジョン・ジョージ・ヘイ(ジョン・ジョージ・ヘイグ)という人物で記事によると、この男はこれまで少なくとも6~7人の人間を殺害し、その滴る血を飲み、さらには硫酸で溶かして証拠を隠滅する、という残忍な人物として紹介されている。
ヘイグの吸血方法は、まず相手を自宅の地下室へ誘い込み、ナイフを使って殺害。喉元を切り裂き、喉笛あたりにソーダ水を飲む時のストローを使い新鮮な真っ赤な血を吸い出すというのだ。
ヘイグの毒牙にかかった人物は、自分の親しい友人ばかりで、そのなかには一緒に会社を興そうとした親友や彼の両親、ビジネスで関わりのある老夫婦など、とにかく殺害しやすい人物から順に血を吸おうと考えていたようだ。
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ところが、ヘイグの関係者ばかりが次々と行方不明になるため、彼を怪しんだ警察がヘイグの自宅を捜査。すると彼の自宅のドラム缶から硫酸およびわずかに残っていた遺体の一部が見つかり、あえなく逮捕となったという。
ヘイグは、遺体を硫酸でドロドロに溶かすという猟奇性(殺人を犯しても死体が発見されない限り罪に問われないと考えていた)から、日本では「硫酸男」として知名度の高い人物だが、事件が発覚した1949年の時点では「実在した吸血鬼」として報道されていた事実は非常に興味深い。
なお、ヘイグは日本でも報道のあった半年後の1949年8月6日に処刑された。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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