日韓トンネルは、九州の佐賀県唐津市から壱岐・対馬を経て、朝鮮半島の韓国を結ぶ海底トンネル、そしてその構想を指す。全長は青函トンネルの約4倍となる220~230キロメートルとなり、総工費10兆円という壮大な費用が見込まれている。
日韓間をつなぐトンネルの構想自体は、戦前の時点で存在していた。朝鮮半島が日本領になっていた1940年、東京から下関をつなぐ高速鉄道、そこから対馬海峡を連絡船で経由して釜山から満州そして北京へといった「弾丸列車計画」と呼ばれる壮大な計画が立てられていた。
その2年後には、日本から壱岐・対馬を経て釜山に至るという海底トンネルの計画も持ち上がることとなったが、戦争の激化に伴って弾丸列車計画そのものが中止せざるを得なくなった。東京・下関間の高速鉄道は、のちの新幹線の原型になったと言われている。
それから月日が経ち、再びこの日韓をつなぐトンネルの構想が、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の教祖である故・文鮮明によって新たに提唱されることになった。1981年に行なわれた統一教会主催の「科学の統一に関する国際会議」にて、全世界の高速道路を結び経済・文化交流を促進する「国際ハイウェイプロジェクト」と呼ばれる案がなされ、そのスタートとして提唱されたのが日韓トンネルであった。
教団関係団体である「国際ハイウェイ建設事業団」、そして地質学者やトンネル技術者を集めた民間団体「日韓トンネル研究会」が発足し、1986年から佐賀県唐津市(当時の鎮西町)で斜坑添削工事が進められ、2007年11月までにおよそ540メートルの距離が掘り進められたという。以後、議員連盟などによって日韓の双方で検討や話し合い、そして推進が行なわれていった。
しかし、その規模があまりにも非現実的であるということ、そして「採算性に乏しい」という批判がなされたことによって、現在この日韓トンネルについては議論が停止し、建設作業が中止となっている。
最大の理由は、その長大な規模のトンネル建設技術の困難さにあるというが、なにより総工費10兆円という高額ぶりも影響しているだろう。当然ながら、地震をはじめトンネル内での事故などを想定した場合、その維持や対策にかかる費用も膨大となってしまう。
近年になるとそれ以外にも新たな問題が浮上しており、陸続きになることによる九州の治安悪化の懸念、何より社会的非難が高まっている統一教会が提唱・推進しているという事情、一説には掘削工事費用の約20億円という金額は「信者からの浄財」から賄われたと言われている点からも、ますますイメージを悪くしているのが現状だ。
悲願として今なお推進している者もいれば、本当に必要なのかと疑問を呈する者もおり、日韓トンネル構想は、影が付きまとったまま放置された状態となっている。
【参考記事・文献】
日韓トンネルとは?旧統一教会が推進する工費10兆円の巨大プロジェクトの実態に迫る
https://www.huffingtonpost.jp/entry/japan-korea-tunnel_jp_630d57e7e4b07744a2f9853e
日韓トンネル
https://dic.nicovideo.jp/a/%E6%97%A5%E9%9F%93%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB
総工費10兆円の「日韓トンネル」構想 技術的には可能でも必要とは思えない
https://www.news-postseven.com/archives/20220828_1787656.html?DETAIL
【文 ZENMAI】
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