先日、ATLASでも報じた通り、映画『ビー・バップ・ハイスクール』で菊リン(菊永淳一)役を熱演した石井博泰さんが先日、5月17日に亡くなった。
石井さんが演じた菊リンは喧嘩が強い一方、甘党でコメディ・リリーフ的な役柄も担う『ビー・バップ』屈指の人気キャラクターだった。強面でありながらどこか茶目っ気もある石井さん演じる菊リンは、まさに漫画から飛び出したかのような迫力があり、全国の『ビー・バップ』ファン達を魅了し続けていた。心よりご冥福をお祈りしたい。
さて、きうちかずひろの原作漫画『ビー・バップ~』が週刊少年マガジンで連載を開始したのは1983年のことである。当時の日本では非行に走る少年・少女たちが社会問題となっていて、『ビー・バップ~』はそんな不良行為を容認できない大人たちへのカウンターパンチとして制作された漫画である。
80年代の全国の中学・高校には『ビー・バップ~』さながらのツッパリ学生が多く存在していたが、1983年3月11日付けの読売新聞に興味深い記事が掲載されている。
記事によると神奈川県川崎市の某中学校で、卒業式の練習中、それまで不良で鳴らしていた卒業生数人が突然立ち上がり、教師達の座っている席へ向かって整列をはじめた。
教師陣たちは思わず身構えたが、卒業生は思わぬ行動に出た。
なんと、ツッパリ学生たちがその場でオイオイと泣き出し「俺たちは間違っていた!謝罪したい!」と頭を下げはじめたのだ。教師のなかには改心したツッパリ君たちの姿につられて涙を流す者もいたが、それまで痛い目に遭ってきた教師たちはツッパリ達の突然の心変わりに訝しげな反応を示すものも多かった。
そこでそれらツッパリ達は、今まで壊してきた校舎の修理・清掃を開始。もちろん素人仕事なのであまり上手に捗らず、穴があいた天井には紙を貼り付けるなどの簡単なものしか出来なかったが、彼らを見た同級生達が「あいつらだけでは大変だ。みんなで手伝おう」と呼びかけ、卒業生総出で学校の清掃をはじめたという。そして、数日後、全3年生たちはピカピカになった校舎で卒業式を無事に迎えて巣立っていったという。
この光景はすぐに広く知れ渡り、読売新聞が記事にしたという。
まるで漫画のような展開ではあるが、これらのエピソードは事実であり、この中学校では、伝説的なエピソードとして連綿と語り継がれている。昭和のツッパリ&不良学生たちの男気溢れるちょっとイイ話である。
(文:穂積昭雪 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)