江ノ島と言えば、ブル中野ではないでしょうか。
かつて全日本女子プロレスマットでクラッシュギャルズと抗争を展開し、悪役のトップスター・ダンプ松本の忠実な妹分であったブル中野。そんなダンプ&ブルコンビをある格闘技ライターは竜虎と呼んだが、これはまんざら嘘じゃないのです。何故かって言うとブル中野の実家は江ノ島の旅館であり、江ノ島は竜の聖地だったのです。今回は江ノ島の竜のお話です。
江ノ島岩屋の洞窟内には鎌倉時代の江ノ島参拝の人々の姿や、古い石仏などがあります。元々この岩屋は、役小角など修験道の術者が修業に使用したとも言われ、不思議なムードに包まれています。岩屋の他にも稚児ヶ渕や化け狸の伝説も有り、江ノ島はちょっとしたミステリーワールドなのです。
五百年程前の事です。武蔵と相模の国境であった鎌倉の深沢村に周囲四十里もある湖がありました。そこには、五つの頭部を持った竜がおり五頭竜と呼ばれていたそうです。
非常に迷惑な五頭竜で、時折付近の人里を襲っては、子供を飲み込んでいたそうです。
ちなみに現在も有る「腰越」という地名は、子供を飲み込んだ竜が越えていく様を「子死越」と呼んでいたのがなまったためだと言われています。そのうち子供が飲まれないように見張りを立てたり、戸締まりを徹底したので竜は、子供に飢え天変地異を繰り返しました。これに困った人々は 毎年五頭竜に人身御供を捧げる事にしたのです。
更に事件が追い打ちをかけます。それは、欽明天皇の十八年四月十二日の事であったと言われています。大地震が起き、その反動で小さな島が付近の海上に浮上しました。それが現在の江ノ島らしいのです。さしもの五頭竜も、大地震をかたずを飲んで見守っておったのですが、出来たばかりの江ノ島に天から美しい姫が降臨してきました。これが江ノ島弁天です。あまりの美しさに五頭竜は一目惚れし、求婚したのですが、弁天は「里の人々を困らせるおまえとなど結婚しない」と一蹴してしまうのです。悲惨ですね。
この弁天の一言で五頭竜はついに改心するのです。意外に単純な竜ですよね。いや恋は盲目という奴でしょうか(笑)それ以来というもの、五頭竜は飢饉・日照りの時は雨を降らしたり、地震の時は津波から里を身を挺して守ったそうです。そして数百年後、ついに力つきた竜は、改心のきっかけを作ってくれた弁天に御礼を言うと、ひとつの山になってしまったそうです。その山が、片瀬にある滝口山だと伝えられます。
竜に助けられた里の人々は、竜を慕うあまり、五頭竜を祀った社を建立するのです。その神社が現在の滝口明神なのです。今も神社の本殿には、体長30cm前後の五頭の竜の木彫り像がご神体として奉納されています。竜は今もそこに眠っているのですね。非常にロマンを感じます。
あれっ?ちょっと待って下さい。気になる事があります。それは五頭竜と弁天との恋の行方です。弁天を愛するが故に改心し、里の人々のために働き死んでいった竜。これではあまりにも竜が報われません。竜のはかない恋はどうなったのでしょうか。
ご安心下さい。現在でも60年に1回「巳年式年大祭」というお祭りが行われているのです。この祭りは、竜の魂魄の眠る竜口明神から、江ノ島弁財天まで五頭竜の木彫り像を運んでいるのです。つまり、竜は木彫り像にのって60年に1回弁天と逢瀬をとげているのです。60年に一度の恋。江ノ島がデートスポットになるのもわかる気がしますね。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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