11世紀に書かれたとされる旧約聖書写本。その本文の下に謎の文章が隠されていた事を科学者らが発見し、注目を集めている。しかも、ページの文字の下に隠されている文章を書いた人物は、医学の父の一人であるギリシアの医師であり哲学者でもあるガレノス本人だというのだ。
この文書は1400年前に古代シリア語を用いて書かれたとされている。なお、ガレノス自身は129年に生まれ、210年に死去している。
それから約500年後、ガレノスが書いていたであろう文章のインクがページから掻き取られ、聖句で上書きされて旧約聖書へと生まれ変わることとなった。この流れは写本を制作することになったエジプトの聖カトリーヌ修道院の何者かが書き記している。一見もったいないことのように思えるかもしれないが、昔は記録用の羊皮紙の値段が非常に効果だったため、前の文章を削って書き直すのは当時では一般的な習慣でもあった。
この文章を発見した研究者らは、マルチスペクトルイメージングを使用して元のテキストを解読しようと数年を費やした。そしてこの度、SLACのStanford Synchrotron Radiation Lightsourceのチームのおかげで文章の解読が近づいているとの発表があった。
今回の研究では、元のテキストを明らかにするために紫外線、可視、赤外線の波長を使用した以前の研究とは異なり、高エネルギーのX線を使用。スキャンを試みる際は、同時にページ上に記されている現存のインクの量が減ることのないように細心の注意を払う必要があるという。
マンチェスター大学にて古典研究を行っているピーター・ポーマン(Peter Pormann)氏は、今回の発見について「驚くべき内容」だと語っている。内容は、ガレノスの元で薬がどのように発展していったか等を記しているもので、本人が書いたものだとすれば「間違いなく、最も重要な医療に関するテキスト」になると述べている。
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Hidden text found in 1,000-year-old hymn book
(田中尚 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)