『当時のヴェルサイユ宮殿に迷い込んだ…有名なタイムトラベル事件(その2)』から続く
2人がこの日のことをお互いに確認できたのは、1週間後に手紙でやりとりをした時のことだった。あまりに恐ろしく、宮殿を出てもそのことを口に出来なかったのだという。
その後2人は自分たちが見たものを確認するため、17世紀当時のことを調べはじめた。あらゆる書物をあたり、研究家を訪ね、丹念に当時の様子を調べ上げた。
すると、当時の守衛は三角帽をかぶり、緑色のコートを着用していたことや、宮殿内に住み込みで働く母娘がいたこと、マリー・アントワネットの側近に天然痘に感染した経歴があり、顔にあばたのある人物がいたことなどがわかった。
そして、あの高貴な女性が誰だたったのかもわかった。あの女性は、絵画に描かれたマリー・アントワネットそのものだったのだ。
3年後、2人はもう一度ヴェルサイユ宮殿を訪れてみることにした。しかし、景色は様変わりをしており、彼女たちが見たはずの橋や音楽堂のような建物は見つけられなかった。
スタッフに聞いてみたところ、この3年間、改修工事は行われておらず、3年前と景観は何一つ変わってないと言われたのだという。
また、音楽堂は17世紀の当時は確かに存在していたが、今は存在していないことが明らかになった。
この奇妙な体験は、本として出版されることになった。
だが、彼女たちが渡ったという橋だけは存在が確認できなかった。そのため、否定的な見解を持つ人々からは批判の根拠とされた。
だが、その後出版された本で、彼女たちが渡った橋が確かにヴェルサイユ宮殿に存在していたことが明らかになり、大きな注目を集めることになった。
実はヴェルサイユ宮殿で彼女たちと同じような体験をした人間は他にもいる。
1928年にヴェルサイユ宮殿を訪れたイギリス人の女性2人が、同じように17世紀の服装をした人々と遭遇することになったのだ。その時、やはりあの奇妙な感覚に襲われ、ひどく不快な気分になったのだという。
彼女たちはイギリスに帰国したあとに、エレノアとシャーロットが書いた本の存在を知り、非常に驚いたという。
ヴェルサイユ宮殿には時空の歪みのようなものが出現することがあり、彼女たちはそこに入ってしまったのだろうか。急に襲われる不気味な感覚、それは別の時間へと迷い込んでしまったシグナルなのかもしれない。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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