「この屋敷は危険よ、これ以上近づいてはいけない」
歩みを止めた宜保愛子は、強くスタッフに要請した。
「……」
燦々と木漏れ日が揺れる山中で、全員の動きが一瞬にして固まる。目の前には時間の流れが止まったような古い家屋が見えている。
某人気番組の収録で、遠野を訪れていた彼女は、この屋敷に憑依している凶悪な霊体を感知し、険しい表情で撮影の中止をうながしたのだ。スタッフ一同、心なしか顔色が青白くみえる。
「…宜保さんがそこまで言うなら… 他の場所を探しますか」
スタッフは、競演の竹中直人に詳細を説明し、理解を促した。勿論、これに異議を唱えるものはいない。
当初、宜保とタレントのTが遠野の(霊的に)ヤバい場所を訪問する企画だった。現場に到着し、カメラを抱えたスタッフが撮影に入ろうとした時、宜保が只ならぬ霊気を感じたというわけだ。
結局、撮影場所は遠野の伝統家屋である「千葉家の曲がり家」に変更され、内容もTがザシキワラシに逢う為、旧家に宿泊するという内容に変更された。
当時、番組スタッフに、この場所を紹介したのは、遠野の駅前にある某宿泊施設のオーナーだった。
「あそこは、遠野でも有数の心霊スポットですよ」
彼が遠野の不思議スポットをいくつか情報提供したのである。本人もこの幽霊屋敷を探検しているし、屋敷に関する奇妙な噂をいくつか聞いているという。
その話は次回に譲ろう。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)