都市伝説の中で、こんな話がある。
アメリカの若い女性がパーティーで着る衣装を探しに古着屋に行った。すると、少し古いものながら洒落たデザインの白いドレスを発見。試着してみると誂えたようにぴったりなので、気に入ってそのまま購入しパーティーに着ていくことにした。
ドレスはとても似合っており、彼女と踊りたがる男性も少なくなかった。彼女はみんなと楽しい時間を過ごしていたのだが、次第に異臭を訴えだし、やがてパーティーのさなかに倒れてしまった。彼女はすぐに病院に運ばれたが、亡くなってしまった。
不審に思った警察が司法解剖を行った所、彼女の血液からはホルムアルデヒドが検出された。彼女が異臭を訴えていた事もあり調べてみたところ、彼女の服に大量のホルムアルデヒドが付着していた事が判明した。
このドレスは古い作りの店でずっと売れ残っており、最終的に古着屋に流れたのだが、長期間店舗にあった際にホルムアルデヒドに晒され続けていた。そして彼女が着たことにより、体温でホルムアルデヒドが気化して彼女を死に至らしめたのだ…というものである。
もちろんこれはただの都市伝説である。
ホルムアルデヒドや防腐剤など、問題のある薬品のニュースが出た際に考えだされた都市伝説でしかない事が判明している。だが、中には実際に「着た人が死んでしまう」恐ろしいドレスも存在している。
それは近代、19世紀末期に生み出されたある染料によって鮮やかな緑色に染められたドレスだった。
「パリ・グリーン」「エメラルド・グリーン」とも呼ばれた鮮やかな緑は亜ヒ酸によって染色されたものであり、着た人はヒ素中毒に陥って命を落としてしまうというものであった。
亜ヒ酸銅系の染料は、有毒ながらとても発色が良かったため、ドレス以外にも様々なものに使われた。かの皇帝ナポレオンは緑色が好きで、これらの染料で鮮やかな緑に染めたものを壁紙として採用していた。
しかし、亜ヒ酸銅はカビが生えた際に有機ヒ素を発生させてしまう。一説にはナポレオンの死因はこの壁紙によるヒ素中毒とも考えられている。死に直結する恐ろしい布は実在したのだ。
(勝木孝幸 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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