お笑い芸人・ライセンスの藤原一裕は、女の幽霊が住んでいるマンションの一室に入居してしまったことがある。
田舎から大阪に出てきたばかりの藤原は、大阪市内で自分の部屋を探していた。
一軒目の不動産屋で良い部屋が見つかったのでそこに内定した。しかし、念のためもう一軒の不動産屋を訪ね、他の部屋を探していると、
「しょうがないですね。この部屋なんかどうですか」
そう言って不動産屋が出してきたのは、かなり好条件の部屋だった。
ミナミから歩いて数分の場所にあり、10畳ワンルームで36,000円のマンション物件を提示された。しかも、実際にその部屋を見てみるとかなり綺麗であり、バスとトイレも清潔な好物件だった。
(これは掘り出しもんや、ここに決めよう!)
早速、その部屋で住み始めたのだが、不可解なことが次々と起こった。窓を閉めてクーラーもつけずに寝ていると、置いてた雑誌がひとりでに
「ぺらり、べらり」
とめくれていく。
(なんや、これは夢か)
自分は夢でも見ているのかと思ったのだが、違う日にも奇妙なことが起こった。真夜中に突然テレビがついたのだ。
「ザーッ、ザーッ、ザーッ」
一人でについたテレビを見ながら藤原は不安な気持ちになってきた。
(一体これは何や)
またある夜は、藤原が寝ていると
「ジャージャージャージャー」
バスルームで勝手にシャワーが出始めた。
(うーむ、この部屋はやはり何かある)
そんな時、ミナミで合コンがあった。女の子たちとかなり盛り上がって、二次会は藤原の部屋で飲もうということになった。マンションの近くまで来ると、女の子が急にこんなことを言い始めた。
「私、このマンションには・・・入れない」
霊感が強いと言う女の子は藤原の部屋に絶対に入ろうとしなかった。
「霊か見えるんだったら見てくれ」
藤原が懇願し、女の子はしぶしぶ中に入ってくれた。するといきなり部屋の角を指差しこういった。
「あの角にいてる」
部屋の片方の角にベッドを置いているのだが、その対角線の角にラックを立ててテレビを置いている。そのテレビの裏側の角に女性の幽霊が立っているという。
「なんでそんなところに、霊が立ってるんや」
「だって、一人暮らしの藤原さんが一番見つめる方角はテレビが置いてあるあそこじゃないですか」
幽霊が見えるその女性の話によると、カレ氏にフラれて自殺した女の幽霊が藤原のことをカレ氏と勘違いしてこの部屋に住み着いているというのだ。
(あかん、もうこの部屋には住めない)
そう思った藤原は、しばらくして引っ越しすることになった。引っ越しするときに隣に住んでいた管理人のおばさんに挨拶にいった。
「おばさん、僕引っ越すことになりました。僕の部屋お化けが出るんですよ」
するとおばあさんは不思議そうな顔をしてこう言った。
「あんた、知らんかった? 7階から飛び降りた女の子があんたの部屋のベランダに落ちて死んだのよ」
アトラスでは過去に幽霊が出るマンションについて報じている。「幽霊が出るマンション、おぎやはぎの部屋」がその記事である。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)