ラスコーの洞窟やタッシリの壁画をはじめ、昔の人々は狩猟や儀式の様子など、動物や人々の営みの様子を生き生きと描き、絵に残してきた。これらの絵は長い年月が経っているにも関わらず今でも鮮やかな色彩を保っている。では、彼らはどのような物を用いて絵を描いていたのだろうか。
その答えとなるかもしれない遺物が先日イギリスで発見された。
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10,000-year-old crayon unearthed in England
ノースヨークシャー州スカボロー近くに位置する重要なメソスリック遺跡であるスターカー(Star Carr)にて、オーカーと呼ばれる赤色の鉱物性顔料で作られたクレヨンが発見されたのだ。同じ地域の別の場所では同様の、黄土色の小さな塊も見つかっている。
ヨーク大学のアンディ・ニーダム博士は語る。
「この小石は一種の顔料の塊であり、石に刻まれた深い溝は赤色の顔料として用いるため、削ったり欠いたりして粉末を得ようとした痕跡であることを示唆している。また多方向に縞状の鋭いエッジが入っているが、これはおそらく現代の鉛筆やクレヨンと同じように、直接描画や着色するためのツールとして使用されたことによるものではないかと思われる」
先史時代、狩猟採集を行っていた中世石器時代の人々は、壁画を初めとする様々な彩色目的のために黄土を集めていたことが知られている。しかし、染料の現物が発見されたのは今回が初めてだ。
ニードハム博士は更に次のように言及した。
「この繊細な塊がきちんと遺されていた事に本当に驚いています。約10,000年の時を越えて発見されたこの塊が、古代人の生活を詳しく知る手がかりとなってくれることを願います」
(田中尚 山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©Paul Shields/University of York