人間より強い生き物が神格化された例としては狼がある。国内において、狼は今では絶滅してしまったといってもいいが、狭い日本で唯一の猛獣であり、高い知能も有していたため神格化され「真神」ないしは「大口真神」と呼ばれるようになり、厄除けや盗難などの災難、悪人から善人を守る存在とされるようになったのである。
有名なところでは埼玉県秩父市の三峯神社が該当する。
三峯神社は古くから山岳信仰の舞台として修験道の聖地となってきた。江戸時代になると山岳信仰に加え、秩父の山に棲む狼達を猪などから農作物を守る神のお使い、ご眷属とみなす「お犬さま」信仰が盛んとなり、三峯神社の狼の護符は盗賊や災難除けになるとされた。
現在でも三峯神社では絵馬や御札、境内の石像などでお犬様の姿を見ることができる。社伝によれば、景行天皇の時代、日本武尊の東征の際、碓氷峠に向かう途中に現在の三峯神社のある山に登り、伊弉諾尊・伊弉册尊の国造りを偲んで創建したという。
三峰信仰の中心をなしているものに、御眷属(山犬)信仰がある。享保12年9月13日の夜、日光法印が山上の庵室に静座していると、山中どことも知れず狼が群がり来て境内に充ちた。法印は、これを神託と感じて、猪鹿・火盗除けとして山犬の神札を貸し出したところ、霊験があったとされる。
三峯神社で近年特に注目を集めているのは毎月1日にのみ配布される「白い氣守」。中には神社のご神木が入っているため、いつでも三峯神社の気を得ることが出来るという。ちなみに全体が白く、また「お犬様」の気により厄除けのご利益が強いとされている。今年は戌年でもあるので、特に争奪戦になりそうだ。
また、の行事として年占「筒粥神事」が行われる。1月15日に一室に籠もった神職により、宵から15日の暁にかけて行われるもので、神饌所で炊かれた小豆粥に、36本の葦の筒を漬け、この筒の中に入った粥の量により36種の作物の今年の作柄を占うもので、その結果は印刷され、春先に参拝する信者に分けられるという。
今年の無病息災を祈って、神示に参加してみてはいかがだろうか。
(加藤史規 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像©ジュリー・楊