埼玉県川越市には、不思議な伝説の残るお稲荷様の伝説がある。
1823年、大雪の日に白狐が現在の川越市内、蔵町近辺に迷い込んだ。若衆等は白狐を追いかけ回し、最後には殺してしまった。するとその翌晩から、町には夜な夜な大きな火の玉が現れるようになった。
町民たちは殺された白狐が祟っているのだと恐れ、稲荷の社を建立して供養を行ったという。これが現在も川越市内に残る雪塚稲荷にまつわる伝説だ。
これだけなら各地に残る伝説と変わらないが、この雪塚稲荷には伝説を裏付ける証拠も残っていたのである。
1980年、改築の際に雪塚稲荷の調査が行われた。その時、社殿の床下より「雪塚稲荷神社遺躰」と刻まれた石版が発見された。しかもそこには「文政6年2月12日御霊昇天 同年3月12日御礼祭日と定め同年同日雪塚稲荷神社と称す」との文章も刻まれていた。つまり、伝説にあった白狐と火の玉の騒動が実際に起きた事であると証明されたのである。
なお、この白狐は同じ埼玉県の東松山に存在する箭弓神社の使いで、東京にある稲荷の総本宮である王子稲荷へ向かう道中であったとされている。
箭弓稲荷も日本三大稲荷の一つに数えられる有力な稲荷とされているので、雪塚稲荷の白狐も相当な力を持つ狐だったのではないだろうか。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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