「声優のアイコ」事件と言えば、覚えている人も多かろう。
日頃は男装している女性が、女性の姿に戻り、複数の男性に対し昏睡強盗を行っていた事件だ。
犯人の神いっきという人物は、性同一性障害であり、同時に多重人格者だった。コウジというドスの効いた声で喋る男性の人格、ケンジという4歳の男の子の人格、アイコという昏睡強盗を行った女性の人格、という3つの人格を持っていた。
そして公判の最中に4歳児ケンジの人格が出る事があったという。幼少時、父親とうまくいかず、その時に別の人格が生まれた可能性があるが、生まれついての性同一性障害のため、整合性をつけるために違う人格が生み出された可能性も否定できない。
さらに、驚くべきことにアイコの人格の時に、男性と性交渉を持ったことにより妊娠してしまい、出産もしている。
今回の昏睡強盗は、アイコの人格が行った犯罪だと言えるが、神いっき被告が有罪となり、裁判所は刑罰を肉体に求めた形になった。
つまり、多重人格者がいくつか持っている人格のうちの1つの人格で犯罪を行った場合、その多重人格を共有する肉体に罪を償うべきだと判断したわけだ。
ケンジやコウジからすれば、なぜ自分たちも罰せられるのか疑問に思うだろうが、多重人格のうち特定の人格に対して刑罰を執行するわけにいかず、それらの人格を所持する肉体に刑罰を与えることになった。
昨日12月14日の東京高裁は、一審である東京地裁の判決(懲役10年)を支持し、神被告の控訴を棄却した。今後増える可能性がある多重人格者への判決としては大変興味深い。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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