倩兮女(けらけらおんな)は江戸時代の文献、鳥山石燕の『今昔百鬼拾遺』にて紹介されている妖怪である。
着物姿の中年女性が片手で口元を隠し、もう片方の手は手招きするような仕草(現代でも話し好きの中年女性がやるような仕草)で塀の向こうに笑いかけている様子が描かれているが、その背丈は塀を軽く越えた非常に大きなもの。少なくとも2,3メートルは下らない身長があると推測される。
挿絵に添えられた解説文によれば、微笑むだけで多くの人の心を惑わせた女性の霊がこの妖怪になったのでは、と中国の故事を引用して説明している。だが、この妖怪が実際に出たと言うような民間伝承は残っていない。しかし、同時代の娯楽本にも「笑い声をあげる女の首」という妖怪が登場している。
また、高知県には決まった日に山に入ると現れ、その笑い声を聞くと気絶したり病気になったりするという「笑い女」なる妖怪がいると伝わっている。
現代でもよく報告される心霊体験の一つに「誰もいないのに奇妙な笑い声が聞こえた」という話がある。こういった「声」に関する心霊体験に対する恐怖心がこの妖怪を生み出したのではないかと考えられている。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)