しゅぱんは山形県に伝わる妖怪だ。
高力小右衛門という若い武士がある夜便所で用を足して戻ろうとすると、部屋の前の廊下に何者かの気配を感じた。彼が近寄ってみると、そこには赤ら顔の大入道が天井から逆さまにぶら下がってゆらゆら揺れているのが見えた。
小右衛門は非常に勇敢だったので、恐れることなく大入道に組み付き、もみ合いになったがついには大入道を引きずり落として組み伏せてしまった。彼が大声を上げて兄や使用人を呼ぶと、集まってきた人々の前で大入道は溶けるように消えてしまったという。
翌年、屋敷替えでこの家には別の武士が住むことになったが、この妖怪は再び姿を現した。この時は使用人の土左衛門に組み押さえられ、「おまえは誰だ」との問いに「しゅぱん」とだけ答えて消えた。
同じ赤ら顔で大男の姿をした妖怪に「朱の盆」という妖怪がいるが、急に現れて人を脅かしたりする所から「朱の盆」の話が変形して現在の話になったのではないかと考えられている。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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