妖怪の伝説の中には、まるで未確認生物のように正確な目撃証言があるものが存在する。
高知県や和歌山県に伝承の残る、海にすむ獣の妖怪が「海犬」だ。
高知県では、内藤惣三郎が浦役人(港の管理者)を務めていた時に目撃されている。2月1日の夜の船を出して釣りをしていると、にわかに波が高くなり、何者かが舳先(へさき=船の先)をかじっている。
怖くなって命からがら浜に帰り、翌朝船を調べたところ、幅五分の歯形がついていたという。
長老の話によると海犬がかじったということであった。幡多郡の外浦や内浦にも出て、船にかじりついて船の行方をとめたという。
和歌山県には「青い海犬」が出たという伝説がある。
この海犬は普段海の底に住んでおり、海で死んだ子供たちの魂が集まってできた犬だという。
人間が2人以上いると出て来ないが、幼い子供が1人で海辺にいると、海中から出てきて子供を海底に引きずり込む。ゆえに熊野灘の海辺で暮らす子供たちは昔、暗くなると海犬に引きずり込まれるので海辺に行ってはいけないと言われた。
暗くなって海辺に行って貝殻を耳にあてると「ルルル、ルル、ルル」という声が聞こえる。これが海犬の鳴き声だという。
(田中尚 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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