オーストラリア南部に広がるナラボー平原。草や低木が生えているばかりの広大な平原地帯だが、このような何もない地域でもUFOと遭遇する事件が起きている。
1988年1月20日。当時21歳のショーン・ノウルズが運転する車は、兄のパトリック、弟のウェイン、そして母のフェイエを乗せ、ナラボー平原を横断するエア幹線道路を走っていた。
どこまでも直線が続く一本道をひた走っていると、前方に光が見えた。車が停車しているのかと思ったが、ショーンの目にはその光はどこか奇妙なものに思えた。
ショーンは兄のパトリックに「あれはUFOじゃないか?」と冗談まじりに言ってみた。だが、パトリックに鼻で笑われてしまう。
この兄の行動にカチンと来たショーンは、車のスピードを上げ光に近づいていった。
ショーンの予感は正しかった。
光源から20m付近のところまで近寄ってみると、そこにはちょうど卵が乗った巨大なエッグスタンドのような形をした、見たこともないような不思議な物体が存在していた。
高さが3m、幅は約1mあり、それはわずかに地上から浮遊していた。光っていたのは卵型部分の中心部で、それは黄色の光を発していた。
一家があっけにとられながら見ていると、それが動きはじめた。ショーンはあわてて車を道路の反対側へと移動させようとするが、対向車線を走ってきたキャンピングカーと衝突してしまう。
物体はキャンピングカーの方へと近づき始めたので、ショーンは車を走らせ逃げた。
関連動画
1988 Knowles Family UFO Encounter – Australian Nullarbor Plain
危機は去ったかに思われた。だが、いつの間にか物体は彼等の車を追いかけてきており、左右に位置を変えながら近づいてきた。
物体がすぐ近くまで接近すると、車は強い光に包まれ、浮き上がった。
この時、母のフェイエはとっさに窓から手を出していた。すると手にスポンジのような柔らかい感触がし、同時に火傷をしたような痛みが走った。
あわてて手をひっこめるとその手には黒い煤(すす)のようなものが付着していたが、火傷はしていないようだった。
車内にも異変が起きていた。
パトリックは車内に粉塵が舞っているのを確認しているが、同時に生物が腐敗したような悪臭が漂っていたのだという。車が光に包まれてからこの間までで15秒ほどであったが、ここでいきなり車は地上へと落下した。
その衝撃で車のタイヤーがバーストし、運転席にいたショーンは意識を失ってしまった。
一家は恐怖に駆られ、近くの茂みに身を隠したが、物体は彼等を監視するように、近くを漂い続けていた。逃げようにもそこは広大な草原地帯で、逃げ込めるような場所もなかった。
一家は物体が何か攻撃をしかけてくるのではないかという恐怖の中で、バーストしたタイヤを交換した。
30分ぐらい経ったころ、突如物体は飛び去っていった。車を調べてみると、ボンネットには4箇所の傷がついており、煤も付着していた。
一家は直した車に飛び乗ると、近くの町へと逃げた。そこで、怯えながら住人に助けをもとめていると、ある男に声をかけられた。男はトラックの運転手であったが、彼も一家と同じように卵型の物体を見たのだと話した。
その後一家は警察署に行き、彼等の身に起こったことを証言した。警察が車体を調べたところ、確かに4箇所の傷と煤が確認された。
このニュースは世界中で報道されることとなり、UFO研究家による調査も行われた。
その調査では、車外に付着していた煤と車内を舞っていた粉塵は別の物質であることが明らかになったが、UFOや宇宙人の存在につながる物証とはならなかったようである。
実は、この事件ではいくつかの不思議な現象が起きていたことも明らかになっている。
それは一家の乗る車が光に包まれ浮上していた時に起こったことであった。何故か喋る声がゆっくりになり、声の音質も低くなっていたのだという。
さらに、彼等は頭部に関する異常も証言している。
パトリックはそれを「脳みそが吸い出される感覚」と表現しており、母のフェイエは「何かが頭の中に進入してきていた」と語っている。
一家はこうした不気味な感覚に襲われており、彼等にとって相当な恐怖を感じる体験だったようである。
なお、衝突してしまったキャンピングカーだが、これだけの騒ぎになったにも関わらず、名乗り出ることはなかったのだという。
UFOに拉致されてしまったのだろうか。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)