昭和50年代、小学生たちを中心に日本全国を席巻した『口裂け女』の噂は、子供たちの口伝で広まり子供たちの夏休みで終息していった。




時は流れ『怪しい噂』の流通経路はインターネット上へと移り、地域や世代を超え24時間年中無休で飛び交う様になった。『怪しい噂』は、大規模な伝言ゲームを繰り返すうちに尾ひれを増やし、亜種や突然変異を産みながら『都市伝説』というアイコンへと姿を変えていく。

この類の噂話には一様に、話の出どころに迫ろうにも辿りつくことのできない『友達の友達』や『知り合いの知り合い』の存在がある。それらは話の信憑性を欠く反面、さも身近で起きている様な恐ろしい事象が創作話=都市伝説であると安心できる救いにもなっている。

しかしながら、実話怪談の蒐集取材を続けていると、どこかで聞いた様な都市伝説やいわゆる『学校の怪談』を直に体験している人に出会う事がある。




大阪在住のデザイナーで30代女性のTさんは中学生の頃、部活の先輩から『口裂け女の家』と呼ばれる怖い噂を聞いた。

通学路から外れた山沿いに古い一軒家があり、今ではおばさんになった口裂け女がひっそりと住んでいるという。蔦に覆われた外壁にはびっしりと呪いの文言が書かれており、それら全てを読むと死ぬらしい。

いかにも都市伝説らしい話だった。好奇心にかられたTさんは放課後に親友と二人でその家を観に行った。民家もまばらな田舎道を自転車で走ること数十分。かなり寂しい場所に噂通りの家があった。まるで廃屋の様な外観で人が住んでいる様には見えない。

外壁を覆う蔦の合間からペンキで殴り書きした様な黒い文字がびっしりと並んでいる。内容は支離滅裂で得体のしれない激情だけが伝わってくる。『電波住宅』によくあるアレだ。生まれて初めて見るその光景は中学生の目には衝撃的だった。

口裂け女の存在にリアリティは感じないが、こんな家に人が住んでいるとしたら一体どんな怪人なんだろうかと気味が悪くなった。

「だーじゃーまーるぁーーっ!!」

突然、甲高い金切り声が静寂を破った。

家の窓からボサボサの白髪を振り乱した老婦人が顔を出してこちらを睨み付けている。
Tさんと友人は恐怖で固まってしまった。

老婦人の憤怒の形相は常人のそれとは違っていた。口の周りや頬にあるはずの肉や皮がなく大きくえぐれたかの様に顔の下半分がむき出しになっていた。骸骨がしゃべる様に、老婦人は金切り声をあげている。気付くと、Tさんは友人に手を引かれ走り出していた。

「今思えば病気か怪我の痕だと思うんだけど、子供の目には妖怪みたいに映るよね……。」

Tさんの体験はまさに現代妖怪誕生のシーンに立ち会ったケースと言えるだろう。

(ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)





 

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