浅草生まれの大畑さん(仮名)のおじいさんは旅廻りの劇団に所属していたそうです。
愛敬のある顔と身軽な身のこなしが人気が一座の3枚目として大人気だったといいます。
昭和30年代のあるときの話です。旅先の町での公演を無事に終え、地元のタニマチと飲み屋で別れ、旅館まで帰る途中でそれは起こったらしいのです。
不慣れの上、夜道だったためにOさんのおじいさんは道に迷ってしまいました。
「まずいなあ、酔いも醒めてきたぞ、早く帰らないと」
急に心細くなったおじいさんはふと目の前に人影を発見したのです。(助かった、どうやら女性のようだ・・・)
「すいません。道に迷ったもんで、旅館の場所を教えてもらいたいんですが」
と、その問いかけに振り向いた女性の顔を口もとまで裂け、目には狂気が宿っています。
(幽霊だ!!)おじいさんは一目散に逃げだしたそうです。しかし女は笑いながらとても女性とは思えないような走りで追いかけてくるのです。
「ワッハッハッハ、ワッハッハッハ」
その声が背後から聞こえてきます。(つかまったらどんな目に遭うんだろうか)
笑い声は徐々に近づいてくるではないですか。このままでは追いつかれてしまう。おじいさんは必死に走りつづけました・・・。
どのくらい走ったでしょうか。おじいさんはいつのまにか、さっきまでいた飲み屋まで戻っていました。
おじいさんは後日、孫の大畑さんにこういって聞かせたそうです。
「いつもお客さんからの笑い声に慣れている3枚目俳優にとっても、あの時のあんなに怖い笑い声はなかったよ」「つまり笑いっていうのは・・・楽しいのと怖いのとふたつあるんだよ」
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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