神とリンクする仮面の存在は世界中で確認することができる。
例えばアステカ文明では、テスカトリポカというアステカ神話に登場する神を祀るための祭が行われており、そこでテスカトリポカの仮面が使われていたことが知られている。
テスカトリポカはアステカ神話における創世神で、非常に荒々しい神である。
テスカトリポカは世界が作り出されたあと、ライバルのケツアルコアトルにその座を奪われてしまう。テスカトリポカは怒り、その時地上を支配していた巨人族を皆殺にし、その後、ケツアルコアトルに復讐を遂げて、再び最高神の座に君臨するようになる。
こうした荒々しさが反映されたのか、テスカトリポカの祭祀は、残虐性をもった祭りであった。祭祀では1人の若い男性が主役となる。
この役を選ぶのは祭司で、祭りの1年も前に決定される。
祭りまでの一年間、男性には従者が8人もつけられ、非常に裕福な生活を送ることができ、祭りの直前には4人の妻を娶ることも許される。
祭り当日、男性に対する扱いは神そのもののようになる。儀式のクライマックス、神官が祭壇にいる男性の胸を裂いて心臓を取り出し、テスカトリポカに捧げられる。
この時に用いられたのが、上の画像にあるテスカトリポカの仮面である。画像の仮面は翡翠や黒曜石が素材となっているが、その骨組みとなっているのは人間の頭蓋骨である。裏側の頭蓋骨の後頭部にあたる部分はくり抜かれ、皮が縫いつけられており、前歯も抜かれている。
仮面を使い、さらにここまでのことをして神とのリンクを図っていたのである。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)