これは、山口敏太郎が当時千葉県市川市に住んでいた姪から聞いた、学校の通学路に出るとされた都市伝説の妖怪である。
片腕じじいは帰宅途中の子供を見つけると大きな声で「おい、待てそこの子供!」「おい、うるさいぞ!」などと老人独特のしわがれた声で怒鳴りつけてくると言う。言葉遣いは非常に乱暴で、その声を聞くだけで子供が泣き出してしまうほどに迫力のあるものだという。
しかし、この声の主はどこにいるのだろうと周りを見回しても姿が見えることはない。それもそのはず、片腕じじいは異次元に住んでいる妖怪で、常に片腕だけしか見ることが出来ないのだという。だから壁や空中からいきなり老人の片腕だけが生えている、という形になるのだ。
この手に捕まったら最後、異空間に引きずり込まれてしまうため、片腕じじいに怒鳴られたらすぐに逃げ出さないとさらわれてしまうそうだ。
一見現代の都市伝説や、学校の怪談のように見えるが、この話は昔から各地に存在する「子どもに対する教訓妖怪」の側面を色濃く残している。水辺など危険な所で遊ばないように河童が出ると言いつけたり、夕暮れになると妖怪にさらわれてしまうと言って早く家に帰るように促すという類の伝承だ。
そう考えると、現代妖怪や都市伝説が生まれる理由というものは昔からあまり変わらないものなのかもしれない。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
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