大阪市北区与力町には昔、巨大な百足の妖怪が住み着いていた「百足屋敷」なる家があったという。
この家は地元でかなり噂になっていたようで、家賃無しにしても借り手がつかないほどであったという。
明治27、8年頃、ある未亡人がこの屋敷に住むことになった。夫を亡くしての一人暮らしで経済的事情によるものだったそうだが、起居して5日目の夜半に枕元の縁側に面した障子がガサガサと音を立てた。びっくりして彼女が目を覚ますと、障子に巨大な百足の影が蠢いていたという。
体の幅は一尺(約30センチ)あまり、長さはおよそ一丈(約3メートル)もあろうかというものであったそうなので、かなりの巨体だったようだ。幸いこの大百足は障子の外側を這い回っており、軒先から天井裏へ這い上がっていく様子が月光によって映し出されていた。
彼女は仰天して外へ飛び出し、近所の家に泊めてもらってすぐに引っ越したようだ。この噂が広まってしまい、屋敷は以前にもまして人が寄りつかなくなってしまった。そこでついにこの家は取り壊され、あとには百足稲荷なる神社が建てられたという。
(山口敏太郎事務所 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)