プルシャはインド神話に登場する巨人。名前はサンスクリット語で「私」や「人間」、「男性」を意味している。
多くの神話には異形の神や怪物が登場するが、プルシャの姿は群を抜いている。プルシャは千個の頭に千個の目、千本の手足を持つとされているのだ。
世界の最初に登場し、宇宙の卵から生まれたと言われ、インドの叙情詩「リグ・ヴェーダ」ではプルシャの体から全てのものが創造されたと言われている。
人間はもちろん、プルシャの思考器官からは月が、目からは太陽が、吐く息からは風、ヘソから空、頭から天界、両脚から地面、耳から方位が生まれたとされている。それだけでなく、時間や過去、未来といった概念的なものも全てプルシャの一部であるとされた。この側面から、インド神話の創造神ブラフマーと同一視されることもある。
この世の全てを合わせてもプルシャの4分の1にしかならず、残る4分の3は天界にあると言われている。そのため、プルシャが影響を及ぼした範囲は非常に大きく、我々が認識できない範囲にまで至ると解釈出来る。
神や原初の巨人の体や死体から大地や生命が生まれたとする神話は多いが、精神世界や概念的なものについても言及している点で、プルシャの伝説は他の神話とは一線を画するものとなっている。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)