現在放送中の大河ドラマ『真田丸』が好評である。当初は「お肌つやつや」など現代用語が頻繁に駆使され、抵抗のある視聴者も多かったようだが、これもまた時代劇に馴染みのない層を取り込むための三谷幸喜マジック。
かつて人気を集めた大河ドラマ『新選組!』のように、どこかユーモラスな初期の部分から徐々にシリアスなクライマックスに向かっていったように、最終回は感動のフィナーレに繋げてくれるだろう。
さて、真田物の時代劇と言えば、大河ドラマが現代劇を扱っていた間、時代劇ファンを満足させるために放送された新大型時代劇『真田太平記』を思い出す中高年も多いだろう。
『真田太平記』は 全45話であり、1985年4月3日から1986年3月19日にかけて放送され、当時学生だった筆者も欠かせず見ていた人気作品であった。この作品において真田昌幸を好演したのが丹波哲郎である。
丹波哲郎は、この役をどうしても演じたくて池波正太郎へ直談判したと言われている。見事に老獪な真田昌幸を演じきった丹波哲郎の演技には、今でも絶賛の声があるが、今回『真田丸』で真田昌幸を演じている草刈正雄は、『真田太平記』では真田信繁を演じている。つまり31年の年月を経て、息子役から父親役になっているわけだ。この配役に往年の時代劇ファンは嬉しさを隠せなかった。
それだけではない。『真田太平記』で樋口角兵衛役を演じた榎木孝明が、『真田丸』では穴山梅雪役で登場したのだ。『真田太平記』で草刈正雄演じる真田信繁にジェラシーを抱き、対立を繰り返した榎木孝明演じる樋口角兵衛。かつてのライバル二人が『真田丸』では一度だけ遭遇したシーンがあった。声をかける真田昌幸(草刈正雄)を、穴山梅雪(榎木孝明)が無視するという展開は、『真田太平記』ファンが唸る演出であった。
草刈正雄演じる真田昌幸は、丹波哲郎が乗り移ったかのように見える時がある。それに関して草刈正雄が興味深いコメントをブログに残している。
「真田丸クランクインしたばかりの頃は、何となく丹波さんがスタジオに降りて来られて、しっかりやれよ??と言われていた気がしましたよ」草刈正雄のブログ 2016年4月26日より
なんと嬉しいコメントではないか。丹波哲郎の魂をしっかり受け継いだ草刈正雄の演技は、父・真田昌幸の遺志を受け継いだ真田信繁そのものである。今後もにくい演出や懐かしい配役があるのではないだろうか。
どんなに批判があろうとも、筆者は『真田丸』と三谷幸喜を支持する。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)