江戸時代中期に中国の『三才図絵』を下敷きに編纂、出版された百科事典『和漢三才図絵』巻十四外夷人物の項に、中国に住む巨人として奇妙な人物の説明と絵が掲載されている。
それに曰く、海の東の方に住む人々の手の長さが地に届く程長いという長臂国があるという。ある人が彼らの着ている服の袖の長さを測った所、3メートル以上もあったという。また別の話では腕が6メートルもの長さがあるとか、腕ではなく脚の長い人々が住む国もあり、彼らの脚の長さは9メートルにも達したとの話もある。しかし『和漢三才図絵』の編者である寺島良安は、さすがに腕や脚が6メートルや9メートルもあるという話は信じられない、としている。
また、中国の地理書である『山海経』には長臂国の人々は長い腕でもって水中の魚を捕らえる、と書かれていた。
日本でもこの長臂人や長脚人は妖怪の手長足長として知られている。しかし『山海経』では長臂国と長脚国との距離は離れているため、長臂人と長脚人が組んで生活する、といった記述は見られない。しかし、二人が組んだら便利であろうとの考えから彼らは多くの文献で足長が手長を背負う構図で描かれるようになったのだろうとみられている。
(飯山俊樹 ミステリーニュースステーションATLAS編集部)
画像は『和漢三才図会 14』表紙より