この拉致ケースは、筆者の実弟が同級生だったY君から聞いた話である。
Y君は実弟の中学時代からの親友である。料理留学もしたほどの腕利きのシェフであり、今では某駅前に料理店を構えている。筆者も、昔から知っている男で真面目な人物である。
「お兄さん(弟の同級生のY君は筆者をこう呼ぶ)、僕の先輩シェフにエイリアンに拉致られたという人がいるんですよ」
山口事務所に遊びに来た彼は突然、こんな話を切り出した。
「本当なの?Y君の先輩っていうと、かなり腕の良いシェフだよね」
Y君は大きく頷いた。
「ええ、X(有名レストラン)の厨房を任されていた程の腕利きですよ」
有名な店の名前に筆者は仰天した。超一流の厨房を仕切っていた人物である。
「そんな凄いシェフが、エイリアンに拉致られたっていうの?」
「はい、そうなんですよ。だって金属が体内に埋まってるんですよ」
筆者は仰天した。またしても、インプラントである。
「エイリアンによるインプラントか、まさか」
「僕もまさかと思いましたが、確認したんですよ。確かに手首に傷があって何か異物が体内に入っているんです」
この言葉に衝撃を受けた筆者は早速、Y君を通じて取材を申し込んだ。だが、現在家族が重病になっており、精神的な負担が大きいという理由で取材は拒否された。
彼はY君に向かってこう言ったそうである。
―――恐ろしい。思い出すのが恐ろしいんだ。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
画像©PIXABAY