ネット上には奇妙な噂が飛び交っている。そこには真偽不明の怪異な物語が多い。
数年まで評判だったのは「見たら死ぬホームページ」である。いくつかパターンがあるのだが、ここではいくつか紹介しよう。
「なんの変哲もない部屋の諷詠がずっと映っていて、女の幽霊が突然現れて、画面を移動しくいくページ」
「ひたすら、お経が流れ、意味不明の画面が続くページ」
「山中のふるびた井戸が映り、その中からボロボロの服を着た女がよろよろと這い出してくるページ」・・・
このホームページは、いづれも筆者が自ら実験台になって確かめたものである。見てからどれも2~3年経つが、私は死亡していない。中には「このホームページを見た人は100年以内に死にます」というギャグのようなページもあった。
そりゃ100年経てば、今いる人間のほとんどは死んでるし(笑)
他にも、見たら「サダコがモニターから出てくる」というホームページもあった。サダコとは、鈴木光司氏の小説「リング」から生まれたキャラクターだが、ネットの中ではまるで実在の霊体のように扱われている。この「サダコ」が映画さながらに、モニターから長い髪を振り乱しながら、出てくるというのだ。このホームページも筆者は確認したが、モニターからは電磁波以外は何も出てこなかった。
また、実在の幽霊がネット回線を移動するという情報も何件か寄せられている。幽霊の成分は、電磁波に近くパソコンの回線を伝わり、移動する事が可能らしいのだ。この話は興味深かったので紹介しておこう。
ある人がチャットをやっていた。すると仲間の一人が突然妙な事を言いだした。
「うわわっ~幽霊がいる」「おいおい、馬鹿な事いうなよ」
その人がからかっても、仲間は幽霊に怯え、チャットを落ちていった。更に幽霊はチャット回線を通じ、他の仲間の家に移動し、次々と仲間を脅かしていった。そして、最後に残ったその人は、
「やばい、パソコンを落とさないと…」
急いで回線をカットした。すると消える瞬間の画面に一瞬だけ、長い髪の女が映ったという。
このような怪談がネットを移動する幽霊として語られているのだ。確かに幽霊は、テレビ局やラジオ局に多く出没していることから、電波などと関連が深いと思われる。
筆者の友人でブルースミュージシャンと著名なカメリア・真紀女史の証言によると、彼女が通っていた滋賀県の某スタジオには「ホワイトボーイ」という妖怪が存在していたという。
この名前は彼女がつけたわけではなく、代々そのスタジオで噂されていた謎の存在だという。この「ホワイトボーイ」という現代妖怪めいた白い男は、スタジオというハイテクの御殿に吸い寄せられた霊界の住民だったのかもしれない。
また妖怪ポップスで人気のバンド「妖怪プロジェクト」のリーダー平林氏も、道ばたですれ違うと同じに消える老人を目撃しており、音楽を演奏するアーティスト自体にすり寄ってくるのかもしれない。
ちなみに、筆者の友人でプロの霊能者であるあーりん女史は、筆者からやばい心霊写真が送られる時に限って、パソコンがダウンするという。デジカメで撮影された写真データに心霊が映り込む事により、添付メールが送付先に霊障を引き起こしているらしい。霊とパソコンの関連を考えるにあたり、これらの事例は興味深い。
振り返って考えてみると、リアルオンリーの時代から霊はミーハーであった。TV・ラジオ局には幽霊が出現し、CDの曲には”霊の声”が踊った。レベッカの曲、岩崎宏美に曲に妙な声が聞こえると騒いだ昔が懐かしい。
幽霊は科学に解明されるどころか、科学そのものの最先端にも憑依したのである。別の言葉で言うと、先端技術にこそ、常に霊の存在が噂されてきたのだ。つまり、科学で謎がとけてない部分に”幽霊=ゴースト”はいるのだ。
歴史的にも幕末から明治維新にかけて、”カメラで写真撮影されると魂が抜かれる”という流言に酷く怯えたりしている(一部の伝説によると坂本竜馬など幕末の志士が写真撮影の時、手を懐に入れているのは、魔よけらしい)
昭和以降、自動車時代になると江戸期に流行った。現地に駕籠がつくともぬけの空という”駕籠抜け幽霊”の怪談が、”タクシー幽霊”に進化したりしている。これらの事例は我々日本人の最先端技術への畏怖心の現れであろう。
20世紀末に、パソコンや携帯電話が普及され始めた当初もそうであった。パソコン、特にマックには”意志がある”と真剣に話したり、名前をつけ恋人や友人のように扱った。
また、携帯電話から出る電磁波によって”本当に脳腫瘍になる”と信じて、電磁波よけのステッカーを貼ったり(こうなるとほとんど魔よけのお札レベルだが、米国では裁判が行われたとまことしやかに囁かれた)、携帯電話の電波で飛行機が墜落したと思いこむ人が出てきたりした。ちなみに飛行機に乗るときに、荷物に入れた携帯の電源を切り忘れたうちの妻は、罪悪感で卒倒しそうになった(笑)。
基本的に人間(特に日本人)は、先端技術に言いしれぬ不安と、(魔法に近い感覚をもつのか)恐怖を抱くようだ。ハイテクの影に人は幽霊の姿を見るものである。
(山口敏太郎 ミステリーニュースステーション・アトラス編集部)
画像©PIXABAY